Origin/OriginProユーザ事例集
第16回 高知大学教授 西脇芳典 様

高知大学教育学部教授 西脇芳典 様

高知大学教育学部教授 西脇芳典 様

社会の安心・安全のための
化学を用いた科学捜査研究

高知大学教育学部の西脇芳典教授は、兵庫県警察本部の科学捜査研究所出身で、化学を用いた新たな科学捜査技術の開発を目指す分析化学の研究者です。研究では、計測データの可視化と分析にソフトウェアOriginProを導入し、活用されています。今回は、西脇先生にOriginProを導入した経緯と、現在の利用状況についてお話を伺いました。

■ 同じ形式のデータで同じような作業を繰り返すなら断然Origin

- Originを使い始めたきっかけと、使い始める前の状況を教えてください

大学院を出たあと、兵庫県警察本部科学捜査研究所に就職しました。和歌山カレー事件の鑑定で大型放射光施設SPring-8が利用されたことから、警察でもSPring-8を活用する機運が高まりました。その際、兵庫県立大学(旧・姫路工業大学)の松井先生・籠島先生より実験データの解析方法について指導いただけることになりました。SPring-8ではデータ解析に、主にOriginまたはIgorというソフトウェアが使用されています。兵庫県立大学のグループはOriginを使用されていたので、兵庫県警警察本部科学捜査研究所でもOriginを導入し、使い始めました。

それまで私はExcelでデータ処理を行っていましたが、同時にExcelだけでは限界があると感じていました。マクロプログラミングで解決することも可能ですが、それは手間のかかる作業です。対照的にOriginは直感的な操作で使用でき、時間も節約できたため非常に助けになりました。

- 実際に導入していかがでしたか

グラフや分析のテンプレートが一つできたら、後は他のデータを取り込めばすぐに処理ができるのがとても便利でしたね。同じデータ形式で似たような作業を繰り返すことが多いので。データごとに一から作り直すのは、今ではとてもじゃないけれど考えられませんね。

また、Originのバージョン6.1の頃は、標準機能に存在していない機能を使うためのプログラムを有償でライトストーンさんに作成してもらって、よく使用していました。蛍光X線スペクトルの強度、例えばベースラインの上側と下側にGaussianのピークがあるときのそれぞれのピーク面積を算出するという機能です。こちらは今はプログラムなしでも簡単にできますが、そういったカスタマイズサービスがある点も便利でしたね。

- Excel以外の他のグラフソフトも試されましたか?

大学に移った後、SPring-8内に科学捜査研究を行うために立ち上げられた「ナノ・フォレンシック・サイエンスグループ」に参画しました。共同参画された広島大学の早川先生はIgorを使用していた関係で、OriginとIgorを併用していた時期はありました。どちらも優れたソフトですが、Originを先に使用していて慣れていたのもありますが、Igorと比較すると、Originはビジュアルが優れていて使いやすいという印象でした。
あとは、使い方に困ったらライトストーンさんに聞いて、すぐ教えてもらえるのがとても良かったです。操作方法をPDFでまとめて案内してくれるので、後で同じところで困ったときに見返しやすくてとても良いです。

- テクニカルサポートには力を入れているので、実際にご評価いただけていようでとてもうれしいです。

- 現在は、具体的にどのような場面でOriginProを利用されてますか?

私は科学捜査技術の開発を目指す研究を行っています。例えば、何か事件が起こったときに、被害者の爪先に単繊維が残ります。それを分析する手法は様々ありますが、その含有元素に着目してどんな種類か分析できれば、捜査に役立ちます。 例えば一言で「ポリエステル」と言っても様々なポリエステルがあり、年代によって合成時に使用される金属触媒に違いがあります。洋服も同様で、含まれる金属元素が異なるのですが、残念ながら今の一般的な警察鑑定ではその分類ができません。ポリエステルは「ポリエステル」とだけ分類され、あと分類できるのは色や形状くらいです。

しかし、そこで金属触媒による分類が可能になれば、犯人を捕まえる時の有力な証拠になるということになります。そのために、X線イメージングを行っています。単繊維の蛍光X線スペクトルをとって、どのぐらいのX線強度があるかを評価します。その時のスペクトルデータの描画はもちろん、ばらつきの評価でOriginを使用しています。

そして、繊維の断面のナノビームイメージングの作成もします。これによって、ある単繊維がどういう触媒を使って作られた洋服のものかが分かるようになり、それらの触媒が繊維の中でどのように分布しているかも確認できます。

ばらつき評価のエラーバー付き散布図

ばらつき評価のエラーバー付き散布図

単繊維断面のナノビームイメージング1
単繊維断面のナノビームイメージング2

断面の形状からだけでなく、Co(コバルト)の分布の違いによって単繊維の判別ができる

一方で、高知県は農業が盛んのため、科学捜査の技術を使って、農業に貢献しようという研究もしています。こちらの研究は、平成30年度内閣府地方大学・地方産業創生交付金採択事業 IoP(Internet of Plants)が導くNext次世代型施設園芸農業への進化プロジェクトの中で行われています。

高知県はニラの生産量、出荷量ともに全国1位なのですが、先枯れといって葉の先端が枯れている状態や、ウィルスが原因のえそ条斑病などの病害があると、買い取ってもらえないので何とかしたいという農家さんの切実な願いがあります。そこで、ポットに植えられたままのニラに放射光X線をあててイメージングして、先枯れやえそ条斑病の時のミネラルの分布を明らかにすることで、この状態なら枯れなくなるのではないか、という情報を生育の現場にフィードバックできるようになります。

また、ハンドヘルド型XRFという小型のX線の機械を使用して、現場で状態を確認し、最適な収穫時期を診断したりできるわけです。
X線強度を測定して全体をイメージングするんですが、その中の葉の枯れた部分と健康な部分を個別に切り出していく際も、Originを便利に使用しています。

ニラ元素イメージング

- イメージングによるデータの可視化はもちろん、ばらつきの評価、画像を使った解析など幅広くOriginの機能を使用していただいているのですね。

- これからOriginを導入しようかなという方に向けてアドバイスをお願いします。

グラフ作成にしろ、解析にしろ、同じ作業を繰り返すようであれば絶対にOriginを使った方が時間短縮になります。Excelなどで数多くのデータを処理するのはすごく大変ですが、Originを使うことでとても楽になります。後は作図後の細かな編集が可能なところも魅力的な点だと思います。

- Originの機能やサービスについて何かご要望はありますか?

サービスはもうばっちりですね。電話やメールですぐに使い方を教えてもらえますし。Originの初心者の中には、表計算部分はExcel、そのあとの作図はOriginといった使い方をしている方もいると思いますが、もちろんOriginで表計算もできるんですよね。簡単に。そんな時にどんどんサポートに問い合わせて、表計算部分もOriginでできるようにすると、元データを入れ替えるだけで表計算から作図、解析の処理が完了してしまうので、効率がかなり上がると思いますね。

あとは、時代の流れとは言え、価格が高くなってしまったのは残念ですね。これからもずっと使い続けるので、長期ライセンスなら強烈にお得になるとかあると嬉しいです。

- 長期、というのはないのですが、ライセンス数が30以上であればサイトライセンスというお得なライセンスもご用意がございます。また、学生さん向けにOriginの講習をしてほしいといったご要望にもお応えいたしますので、是非ご検討ください。

- 本日はお忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

Origin機能のご紹介

テンプレートによる繰り返し操作

グラフ作成や、解析の操作を他のデータでも同じように実行したい場合、Originではテンプレートを使用した簡単な繰り返し操作が可能です。

  • グラフテンプレート
  • グラフテンプレートは、あらかじめ設定されたグラフのスタイルやレイアウトを保存しておく機能です。一度作成したグラフをテンプレートとして保存しておけば、次回以降、同じ種類のグラフを作成する際に、そのテンプレートを適用するだけで、一貫性のあるグラフを簡単に作成できます。

  • 分析テンプレート
  • 分析テンプレートは、一連のデータ分析手順を保存しておく機能です。データの読み込み、前処理、統計解析などの複雑な分析プロセスを繰り返し実行したい場合に試用できます。

表計算機能

Originでは列ごとに表計算が行えるので、式の入力が簡単で、計算結果を素早く得ることができます。もちろんセル単位で計算式を入力することもできます。

お得なライセンス情報

学生の方の場合、1年間無料で使えるLearning Editionライセンスをご用意しています。また、学校や学部、学科単位で契約できるサイトライセンスもお得にOriginを導入いただけます。

高知大学教育学部分析化学研究室 西脇研究室様のWebページ

高知大学教育学部分析化学研究室 西脇研究室様のWebページはこちらからご覧ください。

page_top_icon