動的因子モデル
Stata の新コマンド dfactor は最尤法を用いて動的因子モデルのパラメータを推定します。動的因子モデルは多変量時系列用の柔軟性の高いモデルであり、観測された内生変数は外生共変量と観測不能の因子(VAR構造を持つ)の線形関数として表現されます。観測不能の因子はまた外生共変量の関数であっても構いません。従属変数に対する方程式中の擾乱は自己相関を持つものであっても構いません。
ここに鉱工業生産 (ipman)、実質可処分所得 (dsp)、週間就業時間 (awhi)、失業率 (unrate) に関するデータがあります。これら4つの時系列をすべて説明できる潜在的な因子が存在し、それは AR(2) 過程に従うものと推察されます。
そこでまず次のようなモデルをフィットさせます。
モデルがフィットされたところで、可処分所得の動的予測を2008年12月以降に対して行ってみます。
. tsappend, add(3). predict dsp_f, dynamic(tm(2008m12)). tsline dsp dsp_f if month >= tm(2005m1)
より興味深いのは観測不能因子のパスです。上ではすべての観測された変数が観測されない潜在的な因子に従っているとの仮説を置きました。その因子の1ステップ予測は次のようにして求めることができます。
. predict factor, factor
その結果をグラフ化すると次のようになります。
. tsline factor
このようにして潜在的な因子を抽出することはときに指標の抽出とか推定と呼ばれることがあります。
dfactor は最尤法により、静的因子モデル、見かけ上無関係な回帰 (SUR) モデル、ベクトル自己回帰 (VAR) モデルのパラメータ推定を行うこともできます。dfactor は SUR モデルと VAR モデル中における誤差の共分散行列に対し制約を課すこともできます。
推定後、内生変数と観測不能の因子双方についての予測を行うことができます。1ステップ予測に加えて dfactor は動的な複数ステップ予測を行うことができます。
時系列分析関連の新機能一覧については こちら をクリックください。