競合リスク回帰

競合リスク回帰は競合リスクが存在する状態において、Cox回帰に代る機能を提供します。例えば癌に対する初期治療から再発に至るまでの時間を、治療の種別と人口統計上の要因との関係で分析を行いたいものとします。その場合、死は競合事象となります。治療中の患者は死亡することもあるため、癌の再発という研究対象の事象の生起が阻害されることがあります。途中打切りの場合には事象が観察できなくなるだけですが、競合事象は興味対象の事象の発生を完全に阻害するため、分析結果の補正が必要となります。

Stata の新コマンド stcrreg は Fine と Gray の比例サブハザードモデルに基づき競合リスク回帰を実装したものです。Cox回帰の場合には、ある時間の経過後に生存している確率を表す生存関数が分析の対象となります。一方、競合リスク回帰の場合には、与えられた時間以前に関心の対象となる事象が生起する確率を表す累積発生関数にフォーカスすることになります。競合リスク回帰はベースラインサブハザードが指定されない状態で推定が行われるという意味で、セミパラメトリックなモデルと言えます。また共変量の効果は比例関係にあるものと仮定されます。時間依存の共変量と係数は許容されます。

次に示すのは子宮頸癌患者に対するモデルをフィットさせた例です。ここで関心の対象となるのは骨盤内における癌の再発であり、それと競合関係にある事象は他の部位における癌の発生です。

output

Stata の stcurve コマンドによって累積発生関数のグラフ化を行うことができます。

. stcurve, cif at1(ifp=5 pelnode=0) at2(ifp=20 pelnode=0)
graph

生存分析における新機能の一覧については こちら をクリックください。

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