臨床現場から質的研究の成果が発表されるまで

MAXQDAユーザ事例 仙台青葉学院大学 齋藤佑樹先生

 前項では、齋藤佑樹先生に質的データを分析するアプローチについてお伺いしました。質的データ分析では、膨大なデータを読み込み、データ間を行き来する作業が必要となります。そこで、質的データ分析支援ソフトウエアMAXQDAを導入する利点についてお話しいただきました。

仙台青葉学院大学齋藤佑樹先生

齋藤佑樹 先生

仙台青葉学院大学 リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 副学科長 教授

4.MAXQDA活用術

「MAXQDAというツールが、認知的負荷を減らしてくれます」

ーーそうして選択した方法で分析を進めていく中で、質的データ分析支援ソフトウエアMAXQDAがお手伝いできることはありますか。

 それはもう沢山あります。質的研究は、とにかく徹底的にそのテキストに向き合って、読み込んでってしていくじゃないですか。そうしないと、やっぱり成立しない研究ですし。データを読み込むだけであればまだ良いんですけど、コーディングをするとなった時には、読み込む作業とコーディングの作業の間を行ったり来たりすることになります。「あそこでも似たようなコードを付したな」という段階になった瞬間に、認知的にかかる負荷が半端なくなってくるんですよね。「似たようなコードがあった気がするけど、どこだったっけな?」みたいなことがもうずっとありまして。さらにそれが何名ものインタビューを扱い、データが数万、数十万文字とあり、そこから共通のコードを引っ張るみたいな話になってくると、脳が半端なく疲れます。ここでMAXDAを使うと、一気にその認知的な負荷を減らしてくれます。コードを思い出したり引っ張り出したりする作業ではなく考えることに没頭できる、そのあたりがいつも有難いなと思うところです。

ーーMAXQDAには、コード名に含まれる単語を検索する機能がありますね。

 新しいコードを作る時に、入力した単語が含まれているコードを自動表示してくれる機能を大いに使っています。あれを見て「そうだそうだ、こんなコードを付けていた。これらは共通のコードで表現できるな」と思う時もあれば、逆に「あの時に作ったこのコードはちょっとニュアンスが違うよね。ほとんど同じような言葉で表現したいけれど、これをイコールにしてはいけないよね」と気付きを得ることもあります。あそこで出てきてくれるのは、僕はもう相当に助かっています。

MAXQDA機能紹介 コードの検索

MAXQDAには、新規コードを作成する際に入力単語を自動検索して既存のコードをサジェストする機能があります。

MAXQDA機能紹介 コードの検索

また、コードの検索や文字列置換をご利用いただけます。

MAXQDA機能紹介 コードの検索

ーーいったんカテゴリーをまとめた後にもう一度コーディングに戻ってカテゴリーを作り直すというふうに、コーディングを周回されることもありますか?

 何周かするというよりも、僕は結構リアルタイムに見ています。例えばAさん、Bさん、Cさんのデータを分析する時に、まず最初のAさんの分析の時には何周もします。そして、「これで完璧だ」と思っていても、Bさんのデータを見たら「あれ? Bさんのコードでこうなってくると、Aさんのデータで作ったあのコードでは表現しきれないことがあるな」といった気付きが生まれます。その時点でAさんのデータに戻るので、データ間をジグザグに行ったり来たりということを常にしていると思います。

 分析の終盤になると、心身ともに疲弊してきて。コーディングの甘さが出てきて「今はこのコードでいいや」と妥協してしまいそうだなと感じたら、少し時間を置くことにしています。MAXQDAの操作に困った時には、ライトストーンさんのテクニカルサポートも活用しています。

ーーいつもご利用有難うございます。サポートにご満足いただけるよう引き続き頑張ります! 他に使い心地の良い点はありますか?

 実は、質的研究をしていて座りの悪さを感じることがありまして。インタビューをすると、クライエントはリハビリテーションの専門家ではないので、当事者の言葉で語ります。一方で、作業療法士の専門家集団には、専門職が使う言葉というのがあります。そして、両者の真ん中に僕が使う言葉というのがあります。僕の使う言葉は、作業療法士が使う言葉に当然近しいわけですけど。質的研究のコーディングの手続きでは、クライエントが使う言葉を読み込み、その意味の世界にどんどん入り込んでいって、そしてそこから専門家側の言葉に変換作業をしていきます。

ーーまさに質的研究の真髄ですね。

 ところが、作業療法士を対象としたインタビューをすると、専門的な言葉を使ってはいるものの、その言葉を正確に使えてないことがよくあります。もし、みんながみんな言葉を正確に使っていれば、冗長な表現を一つの意味しか持たない表現になるまで磨くだけで、発言をそのままコード化できると思うんですけど、そんなことはあり得ないですし。「みんな言葉は知っているけれど、文脈から読み取れる意味が専門用語としての定義とはちょっと違うよね」となることが多くて、そのコーディングに苦労します。専門職があやふやな意味で使った言葉を専門職の世界の正確な言葉でコーディングしてまとめていく手続きで、結構フラストレーションが溜まるんですよね。そんな時もMAXQDDAはかなり僕のフラストレーションを減らしてくれます。

ーーMAXQDAが研究のお役に立てて嬉しい限りです。私もテクニカルサポートをしながら、MAXQDAを学生時代に使ってみたかったなと思います。

 いいですよね。僕も本当にもっともっと早く欲しかったと思います。ツールを持っていないせいで研究方法を変えなくてはいけないというのは、すごく研究倫理にも反することかなと思います。どういった方法で分析をすることが望ましいかというのは、研究の目的などによって決まるべきじゃないですか。ですから、ツールを持つことによって本来やるべき方法を採用できるというのであれば、僕はやっぱりそのツールを持っているべきだと思います。

 だんだんと幅広く発展的な研究をやり始めると、必ず専用のソフトを持ってるかどうかということが足かせになってくる時が来ると思うんですよね。「根性があればソフトがなくても質的研究はできる」という考えも時々ありますが、絶対にあった方がいいかなというのが僕の思いですね。それはMAXQDA使って思いました。ノートをバラバラと100ページ、150ページまで飛んだり、3ページ目に戻ったりといった作業の認知的負荷を減らすという意味では、MAXQDAはすごくいいと思います。

ーーMAXQDAには他にも様々な機能がございますので、新たにやりたいことができた場合など、いつでもサポートにお問い合わせください。お待ちしております! 本日は貴重なお話しをお聞かせいただきまして、本当に有難うございました。

MAXQDA機能紹介 データ抽出

MAXQDAには、指定したデータ中にある特定のコードが付与されている部分のみを抽出する機能があります。特定の事例やテーマに注目したい時に便利です。

MAXQDA機能紹介 データ抽出

また、分析が進んでからも即座に元データに戻ることができます。例えば、事例の比較表を作成した後もワンクリックで元のデータを参照し、前後の文脈を確認することができます。

MAXQDA機能紹介 データ抽出

齋藤佑樹先生の研究については、下記WEBページより詳細をご覧いただけます。

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