「研究とか学問っていうのは、自由でいないといけないと思います」
ーーそのような現場の記録やナラティブデータを解釈するために、様々なアプローチが開発され質的分析法として発展してきたと伺っています。先生の論文※2 で使われている複線経路等至性アプローチ(以下,TEA)が、 曖昧なものをどうにか事例化しようとする手段の一つにあたるのでしょうか。
※2 齋藤佑樹, 友利幸之介, 澤田辰徳, 大野勘太(2022). 訪問リハビリテーションに従事する作業療法士が対象者の活動・参加レベルの目標達成を支援するプロセス 複線径路等至性アプローチ(TEA)による分析の試み. 作業療法 41 (2), 226-238.
おっしゃる通りです。作業療法の一般化することがなかなかに難しい部分を可視化したり言語化したりする一つの方法としては、非常に面白いと思います。
ーー先生の論文リストを拝見すると、TEAを使われていたり、SCATを使われていたりします。「今回はこの分析方法でいこう」という方針は、どのように決められていますか。
リハビリテーション全般に言えることですが、クライエントのその時々の精神状態やちょっとした変化をキャッチしながら治療内容を調整していくというインタラクションがどれだけ生々しく描写できるかという点が非常に大事になります。そういった場合は、時間の流れを捨象しないTEAなどが選択肢に入ってきますよね。
テキスト自体が比較的少なめという制限はあるものの「このテキストの中でこれが言える」ということを生成していきたい時には、SCATを使う場合もあります。
ーーいくつか使える分析方法を先生が引き出しの中で持っていらっしゃって、研究の目的によって方法を選択するという感じですね。
そうですね、本当はもっと引き出しを増やしたいんですけど。次は、この前に操作方法をお聞きしたコードマトリックスをMAXQDAで作成してみる予定です。
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「MAXQDAというツールが、認知的負荷を減らしてくれます」