Origin/OriginProユーザ事例集
第12回 一般社団法人 エコスタディーズ 様

エコスタディーズの活動を支える皆様

エコスタディーズの活動を支える皆様

【エコスタディーズについて】
エコスタディーズは福島県内の原発事故被災地で活動しているボランティア団体です。現在のメンバー登録は40人程で、定年退職した、あるいは半退職している研究者、技術者、技能者を主体に若い世代も加わっています。
専門的知識と技術を活かして、東京電力福島 第一原発事故によって飛散した放射性物質により汚染された地域の自治体の要請に応じてモニタリング活動(放射線量の計測、汚染 状況の調査)を無償で行っています。
事故から7年以上が経過し、避難されていた方々の多くは避難先での生活に馴染まれたこともあり、帰還を目的としたモニタリングを行ってほしいという要請は最近ではほとんどなくなりました。
更に試験操業で釣った魚の放射能も国の基準を超えるものはなくなり、一般操業も再開されるようになりました。
しかし自然界では人知の及ばない事柄も多いため、10年後20年後に何が起るかは誰にも分かりません。
そこで、原発近辺の岩場に残留している放射能の現状を記録しておくために、放射能検出器を中心とした計測システムを独自に開発して計測を行い記録していくという、これから何年続くか分からない地道な活動に取り組んでいます。

■ 計測データを正確に視覚化

- このような活動を始めたきっかけは

東京電力福島第一原発事故後、放射性物質の影響が危惧されていましたが、実際にどのようなデータがあればそれを検証できるのかが分かりませんでした。さらには、検証のための調査方法から検討する必要がありました。
評価に値するデータが取得できれば、客観的に影響を捉えて生活する人々の判断に委ねることができます。
初めは別の団体で活動していたのですが、国や企業に属さずに放射線計測を主務とする、完全に独立した組織として、2015年にエコスタディーズを立ち上げました。

代表理事 塩谷様、代表理事代行 大橋様

- 究極の第三者機関と言えますね

その通りです。最初は被災地の住宅の汚染状況を調べるところから始めたのですが、放射性物質が海水を媒体として拡散し、生態系に影響することも危惧されていましたので、現在のモニタリング活動の場は海上が主です。
多くの魚類が生息する岩場は大学や研究機関などが調査を行っている大型の船が乗り入れにくく、我々の知る限り今まで調査が行われていませんでした。

- 魚類などの生物にも放射性物質の影響が出そうですが・・

船上からCsI検出器を岩場の海底に下ろして計測する方法を考え、 メーカーと協力して検出器の有効性のテストを行いこれで行けるということが分かり、大型の検出器を導入しました。
セシウムはおそらく原発付近の海底に滞留して、粘土質の微粒子に吸着されて沈んでいると考えられます。魚類も海藻も粘土質のものは吸収できないので汚染されてはいないようですが、安全である根拠を示すには至っていません。

- 海上調査は大変でしょうね

塩谷も大橋も定年退職前は東京水産大学(2004年度からは東京海洋大学)で海洋環境学科に所属する、放射線物理学と人工衛星搭載用宇宙塵検出器の開発を行う研究者でした。二人とも海上での計測に関しては全くの素人です。
2015年9月に行った最初の計測で使用した機材は現在の物から比べると本当に玩具みたいなものでした。照明用のライトが岩に衝突してもぎ取られたり、動画カメラのケースが壊れて浸水したりなど失敗の連続でした。しかし回数を重ねるごとに改善されていきました。
2018年4月21日の計測からは新しく購入した大型の検出器を利用することになりました。検出面積が従来の直径1インチから4インチと16倍に増えたことで測定時間の短縮化が実現しました。検出器の海底面への密着の度合いがデータの信頼度に影響します。小型の検出器では検出困難だった放射性カリウムが検出されるようになり、放射性セシウムとの比を利用して密着の度合いを知ることができそうだという思わぬ効果が得られました。
ステンレスLアングルで組んだ検出器ケージには検出器本体に加えて、ライブ映像が記録できるカメラ2台と録画専用動画カメラ2台、照明用ライトが4台取付けてあります。
また検出器の傾きや向きを知るための姿勢センサー、更には海底が岩場なのか砂が被っているのかを超音波の多重反射信号を利用して知ることができないだろうかと魚群探知機も取付けました。
検出器の大型化、各種センサー搭載により重装備化されたこともあり総重量が40kg程度となりました。
検出器ケージの舷側からの上げ下ろしには困難が伴いますが、ロッククライミングの知識ある方からのアドバイスで、無理なく下ろすことができるようになりました。上げるためには船に装備されているウインチを使わせてもらっています。我々の勝手な思い付きのアイデアを現実の物としてくれる、工作担当のお二人には感謝の念でいっぱいです。

調査に使う船は地元の釣り船の船長さんに協力してもらっています。 福島第一原子力発電所から半径5km圏内での調査では、調査地点を事前に海上保安庁に連絡することになっています。調査中には海上保安庁の巡視船が一定の距離から見守ってくれています。

機械工作班長 熊谷 訓行様(左)と電気工作班長 山田 次郎様(右)に測定に使用する検出器ケージを見せて頂きました。

機械工作班長 熊谷 訓行様(左)と電気工作班長 山田 次郎様(右)に測定に使用する検出器ケージを見せて頂きました。

■ Originは満足なツール

- Originを使い始めたきっかけは?

大橋様:1992年、宇宙線研に在籍していた時のドイツ滞在中に、ドイツ人研究者に紹介されました。

塩谷様:私は理研にいたとき にOriginを知りました。Originとは本当に長い付き合いです。

大橋様:今回は、3Dマップ上に計測値を表記したグラフを作成したかったのですが、OriginがGoogleマップから緯度経度情報と一緒に画像を取り込んだグラフが作れると聞いて、新しいバージョンに更新しました。

塩谷様:γ線のスペクトル解析にはピークフィット機能を使っています。

GoogleMapから取得した画像を挿入した2Dグラフ【計測地点】その1
GoogleMapから取得した画像を挿入した2Dグラフ【計測地点】その2

GoogleMapから取得した画像を挿入した2Dグラフ【計測地点】

- Originの良い点・悪い点は?

大橋様:論理的に使えるところが良いですね。ある程度操作に慣れると、どこを操作したらよいか考えれば分かるようになる。でも慣れるまでが結構大変なのですが(笑)

塩谷様:様々なデータ形式に対応している点が良いですね。計測機器から出力された形式そのままで取り込めるのでストレスはなかったです。今の機能で充分なので、もう新機能は追加しないでください。

2018年5月12日 第10 回岩礁計測の様子

2018年5月12日 第10回岩礁計測の様子

- ご意見いただき有難うございます。本体に新機能を追加する代わりに、現在は無料の追加アプリで対応しています。

■ 今後のOriginへの期待

- Originの機能やサービスについて何かご要望はございますか?

塩谷様:最近はエコの観点からかもしれないが、紙のマニュアルを付けずにpdfで賄うところが多いですね。電子媒体だと検索機能が使えるから本当は便利なのはわかりますが、紙媒体で手元に置いておきたいというのが正直な心情です。

大橋様:チュートリアルも活用できるので良いですが、YouTubeの動画はOriginのバージョンが少し古くないですか?それから、レイアウトウィンドウの向きを指定するために直接数値を入力しなくてはならないのが面倒ですね。印刷時のように用紙サイズ向きを指定するように変更してください。

- 紙媒体での提供については沢山のユーザ様からご要望を頂いておりましたので、Origin 2018から新しいスタートガイドを付属してお届けしています。
動画については画面内容が古くなってしまいましたので、改善していきたいと思います。

- 本日はお忙しい中にもかかわらず、お話を伺わせていただき有難うございました。

エコスタディーズの皆様

お勧めOrigin無料アプリ

Google Map Import

Origin 2017以降のバージョンでは、追加アプリGoogle Map Importを無料でダウンロードできます。Google MapのWebページから緯度経度範囲を指定して画像を選択し、等高線や散布図などのグラフに挿入できます。これらの無料追加アプリはOriginLabのWebサイトまたはOriginProのアプリセンターから入手可能です。

エコスタディーズ様のWebページ

エコスタディーズ様の詳しい活動情報は、こちらのWebページからご覧ください。

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