統計的工程管理 (SPC) や統計的品質管理 (SQC) のためのツール

Statistical Process Control

OriginProの拡張機能であるこのアプリは、プロセスの品質を測定、監視、制御を目的として統計的に処理する統計的工程管理 (SPC) または統計的品質管理 (SQC) のためのツールです。製造工程のデータを使用して分析することで製品品質の維持や向上、製造工程の異常検知などに役立ちます。

このアプリでできること

  • 分布の識別
  • 工程能力分析
  • 工程の概要
  • 工程能力分析のデータ変換
  • 管理図
    • 変数管理図(サブグループ)
    • 変数管理図(個別)
    • 計数管理図
    • 時間重み付き管理図
           
Statistical Process Controlアイコン Statistical Process Control
作者 OriginLab Technical Support
ライセンス 無料
必要バージョン Origin 2024(10.1)以降、Pro版専用
ユーザインタフェースの言語 英語
カテゴリ 解析
開発元ページ
※ページ右上のドロップダウンリストで
「日本語」を選択すると切り替えできます。

サンプルデータ

使用するサンプルデータは、以下よりダウンロードできますので、お手持ちのOrigin上で実際に操作をお試しいただけます。

サンプルデータ(spc_data.zip)

zip

zip(174KB)

分布の識別

分布の識別(Data Distribution)機能を使用すると以下のことが可能です。

  • データの分布を調べ、分布のパラメータを推定
  • 以下の15種類の分布のうちデータに最も適合する分布を決定
    Normal、Logistic、Lognormal、3-Parameter-Lognormal、Log-logistic、Weibul、3-Parameter Weibull、Gamma、Rayleigh、Smallest Extreme Value、Largest Extreme Value、Exponential、2-Parameter-Exponential、Gaussian Mixture、Folded Normal
  • データを正規分布に近づけるために、以下の3種類のデータの変換を実行
    Box-Cox変換、Johnson変換、Yeo-Johnson変換

分布の識別の操作方法

ある地域で販売された住宅のデータがあり、このデータに最も適合する分布を調べます。

  1. サンプルプロジェクトを開き、プロジェクトエクスプローラで「 3. Nonnormal」フォルダを開いて「House Sold」ワークブックをアクティブにします。
    ※プロジェクトエクスプローラは、メインメニューの「表示:プロジェクトエクスプローラ」を選択して開けます。
  2. プロジェクトエクスプローラでデータを開く

  3. B列を選択して、Originのウィンドウ左側にあるアプリギャラリーウィンドウを開き、Statistical Process Controlアイコンをクリックします。
  4. アプリギャラリーウィンドウからStatistical Process Controlアイコンをクリック

  5. 開いたダイアログで「Identify Data Distribution」タブを開き、「Identify Data Distribution」アイコンをクリックします。
  6. 「Identify Data Distribution」アイコンをクリック

  7. ダイアログの「Input」タブでは、「Measurement Data」として自動でB列のデータが指定されます。このデータはサブグループがないので、「Subgroup Size By」を「Constant」にし、「Subgroup Size Constant」に1を入力します。
  8. 「Input」タブで入力データを設定

    サブグループがある場合

    入力データにサブグループがある場合の指定方法については、以下のページを参照してください。

  9. 「Distribution」タブで、分布と変換方法を指定します。ここでは「Number of Distributions and Transformations」を「All」にして全ての分布と変換方法で実行します。
  10. 「Distribution」タブで分布と変換方法を指定

  11. 「Display」タブで「Create Probability Plot」にチェックを付け、確率プロットを作成します。
  12. 「Display」タブで確率プロットを有効に

  13. 「OK」ボタンをクリックすると結果のレポートシートが作成されます。
  14. レポートシートの下にある確率プロットをダブルクリックすると個別のグラフウィンドウで開くことができます。レポートシートの「Goodness of Fit Test」表を確認すると、以下の分布はp値が0.05より大きく良く適合していることがわかります。
    • Johnson Transformation (0.369)
    • Gamma (0.184)
    • Largest Extreme Value (0.104)
    • 3-Parameter Weibull (0.1)
    • Lognormal (0.074)

    分布の識別結果のレポートシートと確率プロット

工程能力分析

工程能力分析(Capability Analysis)では、Cp、Cpkなどの指標を使用して以下の分析が可能です。

  • プロセスが要件を満たす製品を生産できるか判断する
  • プロセスを改善し、継続する方法の手がかりをみつける

このアプリでは、入力データに応じて5種類の分析から選択します。

  • 正規工程能力分析
  • サブグループ間/内の工程能力分析
  • 非正規工程能力分析
  • 二項分布の工程能力分析
  • ポアソン分布の工程能力分析

データに応じて工程能力分析を選択

正規工程能力分析の操作方法

ある品質管理技術者が、パイプの製造プロセスを評価したいと考え、150個のサンプルでパイプの高さ (フィート) のデータを収集しました。このデータを分析して、パイプの高さが5.0±0.02 (4.98~5.02) になるか確認する場合を考えてみます。

  1. サンプルプロジェクトを開き、プロジェクトエクスプローラで「1. Normal」フォルダを開いて「Height of Pipe」ワークブックをアクティブにします。
    ※プロジェクトエクスプローラは、メインメニューの「表示:プロジェクトエクスプローラ」を選択して開けます。
  2. プロジェクトエクスプローラでデータを開く

  3. A列を選択して、Originのウィンドウ左側にあるアプリギャラリーウィンドウを開き、Statistical Process Controlアイコンをクリックします。
  4. アプリギャラリーウィンドウからStatistical Process Controlアイコンをクリック

  5. 開いたダイアログで「Capability Analysis」タブを開き、「Normal Capability Analysis」アイコンをクリックします。
  6. 「Normal Capability Analysis」アイコンをクリック

  7. ダイアログの「Input」タブでは、「Measurement Data」として自動でA列のデータが指定されます。このデータはサブグループがないので、「Subgroup Size By」を「Constant」にし、「Subgroup Size Constant」に1を入力します。
  8. 「Input」タブで入力データを設定

    サブグループがある場合

    入力データにサブグループがある場合の指定方法については、以下のページを参照してください。

  9. 「Limits」タブで、「Lower Spec」に下限規格の「4.98」、「Upper Spec」に上限規格の「5.02」、「Target」に目標値の「5」を入力します。
  10. 下限規格、上限規格、目標値を入力

  11. 「OK」ボタンをクリックすると結果のレポートテーブルが作成されます。
    測定値が規格限界のほぼ中心にあり、すべての測定値は規格限界内にあります。また、工程能力指数であるCpk、PpkおよびCpmはすべて一般的に許容される最小値である1.33より大きいため工程能力が十分だと評価でき、生産要件を満たしていると結論付けできます。
  12. 工程能力分析のレポートテーブル

正規工程能力分析以外の分析のチュートリアルは以下のページを参照してください。

工程の概要

工程の概要(Process Overview)の機能では、以下のグラフを含む組み合わせレポートを作成し、プロセスの品質や能力を一目で評価できます。

Xbar / 個別管理図 工程が十分安定しているかを判断
R / S / MR管理図 工程変動を監視し、管理されているか評価
サブグループの最終25プロット サブグループの観測値の分布を調査
確率プロット 選択した分布がデータに適合することを確認
工程能力ヒストグラム 工程データの分布と規格限界を視覚的に比較
工程能力プロット
工程能力統計 工程能力を定量的に評価

工程の概要のサンプル

このアプリでは、入力データに応じて以下の3種類から選択します。

  • 正規工程の概要
  • サブグループ間/内の概要
  • 非正規の概要

正規工程の概要の操作方法

ある品質管理技術者が、機械のカプセル充填プロセスを評価したいと考えています。カプセル重量の規格限界は215±17mgです。8時半から12時まで10分ごとに8個のカプセル重量を収集し、このデータを使って要件をどの程度満たしているかを評価する場合を考えてみます。

  1. サンプルプロジェクトを開き、プロジェクトエクスプローラで「1. Normal」フォルダを開いて「Capsule Weight」ワークブックをアクティブにします。
    ※プロジェクトエクスプローラは、メインメニューの「表示:プロジェクトエクスプローラ」を選択して開けます。
  2. プロジェクトエクスプローラでデータを開く

  3. B~I列を選択して、Originのウィンドウ左側にあるアプリギャラリーウィンドウを開き、Statistical Process Controlアイコンをクリックします。
  4. アプリギャラリーウィンドウからStatistical Process Controlアイコンをクリック

  5. 開いたダイアログで「Process Overview」タブを開き、「Normal Process Overview」アイコンをクリックします。
  6. 「Normal Process Overview」アイコンをクリック

  7. ダイアログの「Input」タブでは、「Measurement Data」として自動でB~I列のデータが指定されます。今回はサブグループを含むデータなので「Subgroups Arranged in Rows Across Columns」にチェックを付けます。
  8. 「Input」タブで入力データを設定

    入力データの配置

    サブグループの配置については、以下のページを参照してください。

  9. 「Limits」タブで、「Lower Spec」に下限規格の「198」、「Upper Spec」に上限規格の「232」、「Target」に目標値の「215」を入力します。
  10. 下限規格、上限規格、目標値を入力

  11. 「OK」ボタンをクリックすると結果のレポートテーブルが作成されます。
    Xbar管理図と特殊原因の検定であるTest1の結論から、ポイント5がUCL外にあることがわかります。工程能力ヒストグラムからは、観測値がLSLおよびUSL内に収まっていないことがわかります。また、Cpkは0.837で1未満です。以上のことから、この工程は要件を満たさないと結論付けられます。
  12. 特殊原因の検定についての詳細は以下を参照して下さい。

    正規工程の概要のレポートテーブル

正規工程の概要以外のチュートリアルは以下のページを参照してください。

工程能力分析のデータ変換

多くの分析では正規性の仮定が必要です。データが正規分布に従っていない場合は、正規分布により近く従うように値を変更するデータ変換関数を使用して、分析用に変換できる場合があります。Originの工程能力分析のデータ変換(Data Transformation)では、以下3つの変換関数を提供しています。

  • Box-Cox変換
  • Johnson変換
  • Yeo-Johnson変換

各データ変換のアルゴリズムについては以下のページを参照してください。

データに応じてデータ変換法を選択

Box-Cox変換によるデータ変換の操作

ある地域で販売された住宅のデータがあり、分布の識別ツールを実行したところ正規分布に従っていないことがわかりました。そこで、データを変換することで、分析に使用するデータを正規分布に従うようにしたい場合を考えてみます。

  1. サンプルプロジェクトを開き、プロジェクトエクスプローラで「3. Nonnormal」フォルダを開いて「House Sold」ワークブックをアクティブにします。
    ※プロジェクトエクスプローラは、メインメニューの「表示:プロジェクトエクスプローラ」を選択して開けます。
  2. プロジェクトエクスプローラでデータを開く

  3. B列を選択して、Originのウィンドウ左側にあるアプリギャラリーウィンドウを開き、Statistical Process Controlアイコンをクリックします。
  4. アプリギャラリーウィンドウからStatistical Process Controlアイコンをクリック

  5. 開いたダイアログで「Data Transformation」タブを開きます。このデータの場合、全て0より大きい値なので、Box-Cox法を使用します。Box-Cox Transformアイコンをクリックします。
  6. 「Box-Cox Transform」アイコンをクリック

  7. ダイアログの「Input」タブでは、「Measurement Data」として自動でB列のデータが指定されます。このデータはサブグループがないので、「Subgroup Size By」を「Constant」にし、「Subgroup Size Constant」に1を入力します。
  8. 「Input」タブで入力データを設定

    サブグループがある場合

    入力データにサブグループがある場合の指定方法については、以下のページを参照してください。

  9. 「OK」ボタンをクリックすると結果のレポートテーブルが作成されます。埋め込みグラフをダブルクリックすると個別のグラフウィンドウとして開けます。
    λ の信頼区間は [0.11, 0.52] で、1が含まれないため、変換が適切であるとがわかります。また、変換後のデータのヒストグラムと確率プロットから、変換されたデータがほぼ正規分布であることがわかります。
  10. Box-Cox変換によるデータ変換のレポートテーブル

管理図

管理図は、プロセスが安定した条件で管理されているかどうかを判断するために使用されるグラフです。このアプリの管理図(Control Charts)ツールを使って、収集されたデータに基づいたさまざまな管理図の作成が可能です。

変数管理図 - サブグループ Xbar-R管理図、Xbar-S管理図、I-MR-R/S管理図、
Xbar管理図、R管理図、S管理図、ゾーン管理図
変数管理図 - 個別 I-MR管理図、Z-MR管理図、個別管理図、移動範囲管理図
計数管理図 P管理図診断、P管理図、Laney P'管理図、NP管理図、
U管理図診断、U管理図、Laney U'管理図、C管理図
時間重み付き管理図 移動平均管理図、EWMA(指数重み付き移動平均)管理図、CUSUM(累積和)管理図

各管理図について詳細は以下のページを参照してください。

Statistical Process Controlアプリの管理図ツール

変数管理図 - サブグループ:Xbar-R管理図の作成

あるナットメーカーでは、直径21ミリメートルに等しい高品質のナットを製造しています。品質管理部で20日間にわたって、1日2台の機械の完成品から4個のナットを抜き取って直径を測定しました。ナットの直径が21±0.05 (20.95~21.05) になるか確認し、2台の機械の動作を管理したい場合を考えます。

  1. サンプルプロジェクトを開き、プロジェクトエクスプローラで「1. Normal」フォルダを開いて「Diameter」ワークブックをアクティブにします。
    ※プロジェクトエクスプローラは、メインメニューの「表示:プロジェクトエクスプローラ」を選択して開けます。
  2. プロジェクトエクスプローラでデータを開く

  3. B、C列を選択して、Originのウィンドウ左側にあるアプリギャラリーウィンドウを開き、Statistical Process Controlアイコンをクリックします。
  4. アプリギャラリーウィンドウからStatistical Process Controlアイコンをクリック

  5. 開いたダイアログで「Control Charts」タブを開き、ドロップダウンリストから「Variables Charts for Subgroups」を選択して、「Xbar-R」アイコンをクリックします。
  6. 「Xbar-R」アイコンをクリック

  7. ダイアログの「Input」タブでは、「Measurement Data」として自動でB、C列のデータが指定されます。今回はサブグループのあるデータなので「Subgroup Size By」を「Column」に変更し、 「Subgroup Size Column」の矢印ボタンをクリックしてA列を選択します。
  8. 「Input」タブで入力データを設定

    入力データの配置

    サブグループの配置については、以下のページを参照してください。

  9. 「Parameters」タブで、「Historical Mean」に平均値の履歴値である「21」を入力します。
  10. 履歴値を入力

  11. 「Limits」タブで「Bounds on Control Limits for Xbar Chart」の項目を開き、「Lower Bound」に管理限界の下限の「20.95」、「Upper Bound」に管理限界の上限の「21.05を入力します。
  12. 管理限界の下限、管理限界の上限を入力

  13. 「Tests」タブで特殊原因の検定を選択します。ここでは、以下の3つの検定にチェックを付けます。
    • 1 Point More Than K Standard Deviation From Center Line
      点 (サブグループ) が中心線からKσ外れているか検定
    • K Points in a Row on Same Side of Center Line
      中心線の同じ側 (すべて上またはすべて下) にK個の連続する点 (サブグループ) があるか検定
    • K points in a Row within 1 Standard Deviation of Center Line (Either Side)
      中心線の1σ以内にK個の連続した点 (サブグループ) があるか、つまり、中心線までのすべての点の範囲が1σ未満か検定

    検定オプションを指定

    特殊原因の検定についての詳細は以下を参照して下さい。

  14. 「OK」ボタンをクリックすると結果のレポートが作成され、以下のことが読み取れます。
    • プロセスばらつきが管理されていない場合、Xbar管理図は不正確になる可能性があるので、最初にR管理図を確認します。2台の機械のR管理図ではすべての点が管理限界内にあり、プロセスばらつきが管理されていることがわかります。
    • Machine 1のXbar管理図では、管理限界を超えている点があることがわかります。TEST 1の検定結果から、ポイント18が不合格であることが確認できます。
    • Machine 2のXbar管理図では、すべてのポイントが管理限界内にありプロセスが安定した条件で管理されていることがわかります。

    Xbar-R管理図

変数管理図 - サブグループ:Xbar-R管理図以外のチュートリアルは以下のページを参照してください。

テクニカルサポート

ご不明な点がございましたら、お気軽にお問合せフォームよりテクニカルサポートまでご連絡ください。

その際、必ず「製品名」「バージョン」「シリアル番号」をご連絡ください。

page_top_icon