他の計量ソフトと比較した時に、コマンド操作を覚える必要が無いということが大きな特徴の一つです。マウスによるメニュー操作で、実用的な計量モデルの推定や予測計算を簡単に行えます。
基本的な統計分析機能をサポートしています。簡単な記述統計量の計算からパラメトリック/ノンパラメトリックな仮説検定機能を用意しています。
基本的な記述統計量も色々な視点から簡単に調べることができます。全標本を対象にすることはもちろん、変数を利用したカテゴリ別の記述統計量、さらに、パネルデータの場合はクロスセクション、時点、プールドデータとそれぞれの基準で記述統計量を求めることができます。平均値、中央値、分散に関する仮説検定は特定の値や、シリーズ間、もしくは一つのシリーズ内のデータをグループ分けしたものに対して実行可能です。また、一元配置のANOVAもサポートしています。変数間の関係を吟味するための共分散や因子分析を行う機能も用意しています。
データの分布を表現するグラフとしては、ヒストグラム、理論分布、カーネル密度、累積分布、生存曲線、四分位プロットなどがあります。2つのシリーズ間、または理論分布と実データの分布を比較する場合にはQQプロットを利用すると便利です。
データの正規性や、指数関数、極値分布、ロジスティック分布、カイ二乗分布、ワイブル分布、そしてガンマ分布などに従っているか、という検定を行う場合はKolmogorov-Smirnov, Liliefors, Cramer von Mises, Anderson-Darlingを利用します。
散布図には回帰直線はもちろん、データの変換を伴う回帰、カーネル密度関数、隣接回帰による曲線を同時にフィットできます。
時系列データを分析する際に利用する機能も豊富に用意しています。基本的な自己相関プロットから、周波数フィルタ、Q統計量、単位根検定などを利用できます。
EViewsには自己相関/偏自己相関関数、Q統計量、クロス相関、そして一時系列用の単位根検定機能としてADF, Phillips-Perron, KPSS, DFGLS, ERS, Ng-Perron、パネルデータ用には Levin-Lin-Chu, Breitung, Im-Pesaran-Shin, Fisher, Hadriといった所を用意しています。
季節調整プログラムであるU.S.Census Bureau's X11/ X12-ARIMAおよびヨーロッパの研究者が好むTramo/Seatsを内蔵しています。もちろん、これらの機能はEViewsのインタフェースを介して利用できます。これらの高度な機能の他に、単純な加法、乗法差分方式も用意しています。
季節調整とは逆に、時系列データからトレンドや周期を求めるためのフィルタ機能として、Hodrick-Prescottフィルタ、Baxter-King、Christiano-Fitzgerald固定長、および Christiano-Fitzgerald の非対称なフルサンプルバンドパス(周波数)フィルタなどを用意しています。
EViewsはパネルデータやプーリングデータの分析も快適に行えるよう設計されています。パネルデータとして定義する際に、クロスセクション数やグループ数に制限はありませし、時点数にも制限はありません。パネルデータは日付対応の有無、バランス/アンバランス、観測度数が一定であるか否かを問わず、パネルデータセットとして設定し、操作できます。
データ構造を変換するツールを用意していますので、スタック型(パネル)とアンスタック型(プール)間で構造変換を簡単に行えます。データ変換の際、リンクやautoシリーズ、データの抽出機能などを使えば、目的のデータだけを抜き出すことができます。具体的には条件に合った範囲の切り出し、マッチマージの実行、度数変換、そして簡単な記述統計量を求めることもできます。
時間方向に長く用意したパネルデータでは、グループごと、期間ごとの統計量の計算、検定、グラフ作成機能はもちろん、パネル単位根検定(Levin-Lin-Chu, Breitung, Im-Pesaran-Shin, or Fisher) と共和分検定(Pedroni (2004), Pedroni (1999), and Kao, or the Fisher-type test)の機能を用意しています。
パネルデータには専用のグラフ機能があります。スタック型データとしてのグラフ、個体ごとのグラフ、そして要約形グラフを用意しています。個体ごとの折れ線グラフを一つのグラフフレームの中に表示したり、個別のグラフフレームに表示できます。要約統計量をクロスセクションごとに求め、平均または中央値、標準偏差や四分位などを同時に表示できます。
基本的な推定モデルとして、最小二乗法、非線形最小二乗法、加重最小二乗法、二段階最小二乗法(操作変数法)、最小絶対偏差推定を含むQ回帰、ステップワイズ線形回帰といった推定手法をサポートしています。これらのすべての推定手法で加重推定がオプションとして利用可能です。説明変数の数に関係なく、多項ラグモデルを利用できます
時系列分析の分野では、ARMA, ARMAX, そしてARCH型のモデルをサポートしています。構造時系列モデルは状態空間オブジェクトを利用して推定できます。
これらの基本的な推定量の他に、上級者向けモデルとして次に示す推定と診断の機能が利用できます。
クロスセクションおよび時系列データ用にGMM推定機能を用意しています。一推定式、複数推定式の両方に対応しています。クロスセクションデータの場合はWhiteの共分散行列、時系列データの場合はHAC共分散行列を利用できます。HACオプションにはさらにプリホワイトニング、カーネル、そして固定、Andrews、 Newey-Westのバンド幅選択法のオプションがあります。GMM推定のアルゴリズムも、繰り返し法、連続更新法から選択できます。GMM推定式の診断機能としては、弱操作変数統計量など複数の手法を用意しています。
時系列データの分散が時間とともに変化する場合は、EViewsに用意されている様々なタイプのARCH(自己回帰条件付き不均一分散)モデルをご利用ください。ARCH(p,q), EGARCH(p,q), TARCH(p,q), PARCH(p,q), Component GARCHモデルをサポートしており、これらの対数尤度を最大化する誤差項の分布として正規分布、スチューデントt、一般化誤差分布を用意しています。ARCHモデルの平均推定式はARCHまたはARMA項を、 平均推定式と分散推定式には、どちらも外生変数を利用することができます。
EViewsは質的選択モデルの推定機能もサポートしています。バイナリー、オーダード、センサード、切断の各質的選択モデルがあり、尤度関数の最大化に利用する密度関数としては正規密度関数、ロジスティック密度関数、極値誤差密度関数を用意しています。カウントモデルはポアソン分布、負の二項モデル、疑似最尤推定(QML)も利用できます。また、オプションとして一般化線形モデルやQML標準誤差を算出します。
EViewsはパネルおよびプールドデータを用いた推定手法もサポートしています。標準的な最小二乗法、非線形最小二乗法に加えて、2SLS/IV、一般化2SLS/IV、GMMを用意していますので、パネルデータの複雑なダイナミックスのモデル推定(Anderson-Hsiao、Arellano-Bond推定量など)も可能です。
ほとんどの推定手法が時系列またはクロスセクション方向の効果モデルの推定で利用可能です。ランダム効果モデルの場合、Swamy-Arora、Wallace-Hussain and Wansbeek-Kapteynを含むコンポーネント分散の不偏推定量をサポートしています。
さらに、AR項、加重最小二乗法、SURによる推定をサポートしています。プールドデータの場合、目的とする(AR項を含む)変数の係数について、クロスセクションごとに異なるパラメータの推定も可能です。
EViewsはシステム推定の機能も用意しています。線形/非線形の最小二乗法、二段階最小二乗法、SUR、三段階最小二乗法、GMM、FIMLを利用して推定できます。推定式間にまたがる制約や、誤差項についての自己回帰過程をサポートしています。
EViewsならベクトル自己回帰/誤差修正モデルの推定も簡単に行えます。推定ができてしまえば、そこからインパルス応答や分散分解もすぐに実行できます。インパルス応答や分散分解の際に利用する標準誤差はモデルから解析的に求めたものだけでなく、モンテカルロ法によるものも利用できます(分散分解の際はモンテカルロのみ)。これらの計算結果は様々な形式のグラフや表として出力できます。
共和分関係式や調整係数に線形制約を掛けることができます。制約には短期制約(Sims 1986)と長期制約(Blanchard and Quah 1989)の2種類をサポートしており、これを使って構造VARを推定できます。過剰識別についてはEViewsが算出するLR統計量による検定が可能です。
VARには推定結果を色々な角度から吟味するための検定や診断機能が用意されています。例えば、簡単なマウス操作でAR特性方程式のインバースルートを単位円とともに表示したり、グレンジャーの意味での因果性検定、ラグ(joint lag)の除外検定、情報基準によるラグの評価、コレログラムと自己相関、多変量の残差を用いた診断機能などをサポートしています。
複数の時系列データで分散と共分散が時間とともに変換する場合には多変量ARCHモデルによる解析を行います。Conditional Constant Correlation (CCC), Diagonal VECH, Diagonal BEKKといったモデルをサポートしています。平均推定式と分散推定式で外生変数を利用することができます。特に、平均推定式においては非線形式やAR項を利用できます。誤差の分布については多変量正規分布やt分布を仮定できます。標準誤差についてはBollerslev-Wooldridgeの堅牢な値の計算もサポートしています。モデルの推定後はサンプル期間内の分散、共分散、相関を表またはグラフ形式で簡単に出力できます。
カルマンフィルタアルゴリズムを用いたダイナミックな一変量、または多変量の時系列モデルを推定する場合は状態空間モデルを利用します。とりわけ、ランダムかつ時間とともに変化する係数を持つモデルやARMA過程にある潜在変数モデルの推定には状態空間オブジェクトは便利です。
フィルタリングとスムージングの機能も充実しています。1ステップ予測、フィルタード、スムージングの3種類の計算機能があり、観測値、状態変数、誤差をそれぞれ算出できます。さらに、サンプル期間内およびサンプル期間外に対するn-ステップまたはスムーズ値の予測計算機能が用意されています。