ベクトル誤差修正モデルの定数項とトレンド

EViews 13では制約付き・無制約の確定係数についてより柔軟な設定を可能にする確定的トレンド仮定のプリセットと、共和分関係の制限付き外性変数、無制限変数、およびさまざまな係数を取得するために使用される直交仮定を使用して、短期方程式と長期方程式の両方に変数を追加が可能になりました。


基本的なVECM

  • 新しい決定論的トレンド仮定プリセットを提供することで、制限付きおよび制限なしの決定論的係数をより柔軟に指定
  • 共和分関係に制限される外生変数、制限のない変数、および短期方程式と長期方程式の両方に含まれる変数をユーザが追加

  1. 貨幣供給量(m1)、国内総生産(gdp)および3ヶ月国債の金利(tb3)の関係というVAR/VECにおける古典的な例を元に紹介します。今回の例では、これら3つの内生変数について4期のラグと、共和分関係の個数が1であると仮定しVECモデルを推定します。さらに定数項の設定をCase 3 (JHJ): Unrestricted constant、定数項に制約なし、として推定します。
    M1, GDP, TB3の3つシリーズオブジェクトを選択し、右クリック > Open > as VARと操作します。MethodドロップダウでVector Error Correctionを選び、Lag intervals for endog.ボックスに1 4と入力しラグの長さを設定します。Estimation sampleフィールドで1959m01 1982m03と入力して標本期間を設定します。OKをクリックして推定します。
    データ
  2. 推定結果のヘッダには、標本数・期間、ラグの設定、内生変数、定数項・トレンド項の設定など、概要が表示されます。
    データ
    さらに共和分関係の係数の推定値が続きます。ここでは、1つの共和分ベクトルを仮定して推定しているため、結果は1列のみです。確定項はJohansen-Hendry-JuseliusのCase 3に従うと想定されているため、共和分方程式には-170.673の直交化切片が含まれます。この値には標準誤差はありません。( )内は標準誤差、[ ]はt値です。
    データ
    EViewsは誤差修正回帰の係数推定値を含む表を表示し、各従属変数の結果が列に表示されます。長期関係の係数はCOINTEQ1に表示されます。以降は。短期的なダイナミクスの推定値です。JHJ Case 3では、短期方程式に切片Cの推定値が含まれています。Cは共和分方程式の内側と外側の両方にあるため、短期推定値は、直交化推定値に基づいて条件付きで計算されることに注意してください
    データ
    最後に、モデル全体に関する各種要約統計量が表示されます。この推定結果をGDPについて、数式で表すと次のようになります。 \begin{align} \varDelta GDP_{t} = -0.00 \times (GDP_{t-1} - 141.72 \times M1_{t-1} + 1419.29 \times TB3_{t-1} + 24187.65) \\ - 0.19 \times \varDelta GDP_{t-1} - \cdots + 1.82 \times \varDelta TB3_{t-4} + 8.10 \end{align}

共和分方程式のトレンド項

  • 共和分方程式に制約のないトレンド項を、誤差修正モデルに定数項を追加

  1. 前の例を変更して、まずラグを2に変更し、共和分の数も2に設定します。共和分方程式がトレンド項を含み、短期方程式は定数項を持つと仮定します。EstimationボタンをクリックしてVAR推定ダイアログを再度表示し、ラグ間隔1 2を変更します。
    データ
  2. 次に、Cointegrationタブをクリックします。Number of cointegration relationsとして2を選択し、Deterministic trend specificationsドロップダウンを4b: Cointegrating trend and unrestricted constantに変更し、OKをクリックして推定します。
    データ
  3. 2つの共和分ベクトルCointEq1とCointEq2が存在し、トレンド項の係数がそれぞれ4.61と-0.11ですが、定数項はありません。
    データ
    この結果のうち、GDPについてのみ数式で表すと次のようになります。 \begin{align} \varDelta GDP_{t} = 0.02 \times (GDP_{t-1} -141.52 \times TB3_{t-1} + 4.61 \times Trend) \\ + 0.03 \times (M1_{t-1} -16.49 \times TB3_{t-1} - 0.11 \times Trend) \\ - 0.57 \times \varDelta GDP_{t-1} - \cdots + 5.63 \times \varDelta TB3_{t-2} -1.82 \\ \end{align}

定数項、トレンド項、および外生変数

  • 共和分方程式と短期方程式の両方にトレンド項と外生変数を追加

  1. 前のモデルを拡張して、外生変数を含めることによって共和分方程式と短期な均衡方程式を拡張してみましょう。
    ここでは10年金利(TB10Y)は共和分関係の外生変数で、短期的なダイナミクスの一部ではなく、生産者物価指数(PPI)は短期的な影響を与えると仮定します。さらに失業率(UNRATE)は短期と長期の両方の関係があると仮定します。
    Estimationをクリックして仕様を変更します。Short-run (outside cointegrating equation)フィールドにPPILong-run (inside cointegrating equation)フィールドにTB10YBoth long-run and short-runフィールドにURATEを入力します。
    データ
  2. さらに、共和分関係が1つ存在し、決定論的なケースでは定数が指定され、トレンドは平衡ダイナミクス(短期)への調整にのみ影響すると仮定します。Cointegrationタブをクリックし、Number of cointegrating relationsドロップダウンを1に変更し、Deterministic trend specificationsドロップダウンを5b: Unrest. Constant and trendに設定します。
    データ
  3. 共和分方程式の結果が3つの内生変数、その後にlong-runのみの変数TB10Yの係数、およびlong-runおよびshort-runの変数URATEが表示されます。後者は直交化を介して共和分方程式に含まれるため、標準誤差はありません。
    誤差修正の結果には、定数項Cとトレンド項の推定値、短期のみの変数PPI、および長期と短期の両方のURATEが含まれます。他の長期変数と短期変数の両方と同様に、URATEの係数は直交化に基づいて条件付き推定されています。
    データ
    この推定結果をGDPについて、数式で表すと次のようになります。数式で表すと次のようになります。 \begin{align} &\varDelta GDP_{t} = -0.09 \times (GDP_{t-1} - 5.85 \times M1_{t-1} + 69.24 \times TB3_{t-1} -64.44 \times TB10Y_{t} + 15.37 \times URATE_{t}) \\ &-0.52 \times \varDelta GDP_{t-1} - 0.52 \times \varDelta GDP_{t-2} \\ &+ 0.45 \times \varDelta M1_{t-1} -3.00 \times \varDelta M1_{t-2} \\ &+ 6.91 \times \varDelta TB3_{t-1} + 5.83 \times \varDelta TB3_{t-2} \\ &-4.37 -61.65 \times Trend + 0.06 \times PPI_{t} + 1.98 \times \varDelta URATE \end{align}

共和分ベクトルの制約

  • 共和分方程式の係数に制約を設けて推定

  1. ここでは、共和分ベクトルの最初の3つの要素に制約を課して推定します。Estimateボタンをクリックして、VAR推定ダイアログを表示します。外部変数を含む既存のモデル設定をそのままに、VEC Restrictionsタブを開きます。Impose restrictionsをチェックを入れ、編集フィールドにB(1,1)=1, B(1,2)=0.25, B(1,3)=0.5と入力します。つまり、EC方程式のGDPの係数を1、M1を0.25、TB3を0.5とします。
    データ
  2. 推定結果のヘッダでは、共和分方程式に課された制約が確認できます。共和分値の要素は推定時に課せられた制限を反映しており、制限された値には標準誤差とt値がないことに注意してください。
    データ
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