棒グラフや折れ線グラフほどではないですが、円グラフも良く使われるグラフの一つです。視覚的な効果を得られやすい反面、使用にはやや注意が必要です。
円グラフが得意なのは、データ全体の「内訳」を表現することです。円の角度をみて、感覚的に内訳をつかめるのが円グラフの特徴です。
次のグラフは、令和元年の酒類の消費割合を円グラフで表現したものです。このグラフを見ただけでリキュール類とビールの消費が同程度であること、また、上位2種で全体の半分以上を占めることなどが伝わってくると思います。
ただ、円グラフは人間が正確に把握しにくい、角度や面積というものを使って割合を表現するため、詳細な比較には向いていないという意見もあり、「円グラフはデータ表現に用いてはならない」とまで言われることもあります。
では、どんな時ならいいのかというと、下図のように「全体と一部の比較」を表現する場合には円グラフは適役です。特に、項目数が少なければ少ないほど、その効果が発揮されやすくなります。
円グラフは必ず合計が100%になるようにします。また、データ項目の数は5~7個程度までが見やすいです。項目が多すぎる場合は、値の小さい項目を「その他」として集約するのがお勧めです。
また、凡例は円グラフの傍に配置するよりも、各スライス上に重ねて表記すると、よりグラフが読み取りやすくなります。
円グラフは、大きなデータ項目から順に12時の位置から時計回りに配置します。ただし、順番に意味がある場合は、大きい順にならべるとかえって分かりづらくなることがあるので注意が必要です。
出典:LINEリサーチ「塩派vsタレ派? 人気焼き鳥ランキング」
なお、「その他」の項目がある場合は、データの大きさに関係なく一番最後に配置します。
棒グラフと同様、円グラフも立体化すると見栄えが良いのですが、奥行きがあるために大小の差が変化し、誤解が生じやすいので、立体化を避けた方がよいでしょう。
円グラフには総量の表現がないため、違うグラフとの比較が難しいという弱点があります。
例えば、以下の2つのグラフを見てみます。一番茶と温室メロンの収穫量トップは静岡県である、ということはすぐにわかります。しかし、2つの円グラフを見て静岡県での収穫量が多いのはどちらかわかるでしょうか?
総量が表示されていないため、円グラフだけではどちらとも言えません。それぞれの総量は、一番茶が13.9万トンあるのに対し、温室メロンが1.71万トンなので、静岡県での収穫量は一番茶が5.2万トン、温室メロンが0.67万トンと大きな差があります。
このように、割合でみればほぼ同じでも、実数で見るとまったく異なることがあるため、円グラフ同士の比較はお勧めできません。
時系列データの内訳の推移を表現できないのも円グラフの弱点です。以下のグラフは日本の年齢三区分別人口のデータを5年ごとにグラフ化したものですが、ぱっと見で変化のようすを読み取ることは難しいことがわかります。
また、今回は5年ごとのデータなので4つの円グラフでしたが、1年ごとのデータの場合は、同じ期間のデータを表現するのに20個の円グラフを描かなくてはならず、それらからデータの推移を読み取るのは不可能といっていいでしょう。
データの内訳を見ながらその推移を表現したり、総量を比較する場合は、積み上げグラフがお勧めです。
ドーナツグラフは、円グラフをくり抜いてドーナツ形にしたグラフです。穴の部分にグラフタイトルや総量を書いたり、二重、三重にして更なる内訳を表現したりすることができます。
出典:LINEリサーチ「塩派vsタレ派? 人気焼き鳥ランキング」
ところで、円グラフは英語でパイチャートといいますが、ドイツではケーキグラフ、フランスではカマンベールグラフ、ブラジルではピザグラフ、中国では餅図と呼ばれているそうです。日本では円グラフなんてシンプルな名前ですが、食べ物の名前を付けるなら、どんな名前がいいか考えてみると面白いですね。