MODFLOW MT3DMSの基本操作

このチュートリアルは、GMSでMT3DMSを実行する手順について解説しています。

MT3DMS(A Modular Three-Dimensional Multispecies Transport Model for Simulation of Advection, Dispersion, and Chemical Reactions of Contaminants in Groundwater System)は、地下水系の溶存物質の移流、拡散、吸着と生分解をシミュレーションするための三次元輸送モデルです。

  • MT3DMSモデルは、グリッドモデルアプローチもしくは概念モデルアプローチで構築できます。本チュートリアルでは、グリッドモデルアプローチでMT3DMSモデルを構築します。
  • グリッドモデルアプローチの場合は、グリッドに手動で値を割り当てます。単純なモデルを簡単に構築するのに適しています。
  • シミュレーション結果を動画にすることができます。

例題について

  • MT3DMS documantationに掲載されている例題を行います。
  • 下記のようなモデルを作成します。
  • このモデルには、透水係数(K)の低い区域が含まれています。
  • モデルの東西は、流れのない境界です。モデルの南北は、定水頭境界です。モデルの北から南へと水流が生じます。
  • 注入井が汚染源となります。ポンプ井は、注入委から移流する汚染された水を汲み上げます。
  • 定常流を解析し、1年間に渡って非定常な輸送解析を行います。

チュートリアルで行う操作

本チュートリアルでは、下記の操作を行います。

  • MODFLOWを実行する
  • MT3DMSを初期化して、いくつかのMT3DMSパッケージにデータを入力する
  • MT3DMSを実行する
  • 解析結果をアニメーションにする
  • 汚染の規模を計算する

別冊の概念モデルチュートリアルでは、テキサス州のモデルを使用して吸着と生分解による減衰をシミュレーションしています。


サンプルファイル

  1. 下記よりサンプルファイルをダウンロードし、ファイルを展開します。

    ダウンロード(3.9 MB)

  2. GMSでサンプルデータ「mt3dgrid/mt3dgrid.gpr」を開きます。GMSでMODFLOWとMT3Dが使用できる必要があります。
  3. 操作を始める前に、データを別名で保存します。メニューバーから「File>Save as」を選択し、ファイル名を「transrort.gpr」に変更して保存します。
  4. MT3DSは、MODFLOWの結果ファイルを読み込んで作動します。ファイル名を変更した場合はMODFLOW を再実行して、解析結果ファイルを作成する必要があります。
    ファイルを別名保存したので、MODFLOWを再実行します。プロジェクトエクスプローラで 3D Grid dataiconを選択します。 Run MODFLOWiconをクリックし、MODFLOWを実行します。解析が終了したら、「Read solution on exit」と「Turn on countours (if not on already)」にチェックが入っていることを確認し、Closeをクリックします。
  5. 作業中は、こまめにデータを保存iconすることをお勧めします。

表示設定の変更

  1. Contour Optionsiconを開きます。Contour method欄で「Linear」を選択します。
  2. Display Optionsiconを開きます。3D GridのCell edgesの色を黒からグレーにします。

画面は、下記のようになります。

MT3DMS Basic Transportパッケージ

  • MODFLOW の解析結果を使って、MT3DMS輸送シミュレーションを設定することができます。
  • MODFLOW 、MT3DMSはモジュール方式で構成されていて、一連のパッケージを入力に使うことができます。

下記の手順でMT3DMSシミュレーションを設定します。

  1. プロジェクトエクスプローラで icon3D Grid dataを展開します。
  2. icongridを右クリックし、メニューから「New MT3DMS...」を選択します。「MT3DMSデータが削除される」警告ダイアログが開いた場合は、OKを選択します。

Basic Transport Packageダイアログが開きます。ここで、stress periodや解析範囲、初期濃度値などのMT3DMSオプションを設定します。

Basic Transport Packageダイアログをいったん閉じた場合は、メニューの「MT3DMS>Basic Transport Package...」を選択して開くことができます。


Species

MT3DMSは多種モデル(multi-species model)なので、各specieの番号と名前を設定します。このチュートリアルでは、「tracer」を設定します。

  1. 「Define Species...」ボタンをクリックし、ダイアログを開きます。下記の設定を行います。
  2. 「New」ボタンをクリックして、新しいSpeciesを作成します。
  3. Nameに「tracer」と入力します。
  4. 設定が完了したらOKをクリックします。

パッケージの選択

使用するパッケージを選択します。

  1. 「Packages...」ボタンをクリックし、ダイアログを開きます。
  2. 以下の3つのパッケージにチェックを入れます。
    • Advection package
    • Dispersion package
    • Source/sink micing package
  3. 設定が完了したらOKをクリックします。

Stress Periods

stress periodsを設定します。MODFLOWシミュレーションでは、計算時間間隔を「stress periods」と呼びます。

輸送シミュレーションは非定常となります。1年間の期間でシミュレーションを実行するには、単体のstress period(入力値は定常)を設定します。すると、MT3DMSが適切な輸送ステップサイズを計算します。

  1. 「Stress Periods...」ボタンをクリックし、ダイアログを開きます。
  2. 1行のLength列に「365.0」を入力します。
  3. 1行のTrans. step size列に「0.0」を入力します。
  4. 設定が完了したらOKをクリックします。

出力設定

本チュートリアルでは、10の輸送ステップごとに解析結果を出力する設定を行います。

  1. 「Output Control...」をクリックしてダイアログを開きます。
  2. 「Print or save at specified interval」を選択し、「10」を入力します。
  3. 設定が完了したらOKをクリックします。
  4. すべての設定を行ったら、OKをクリックしてBasic Transport Packageダイアログを閉じます。 

パッケージの設定

  • MTS3DSでは、下記のようなパッケージを使用することができます。
Advectionパッケージ (ADV)
移流による濃度変化を解析します。
Dispersionパッケージ (DSP)
分散による濃度変化を解析します。
Source/Sink Mixingパッケージ (SSM)
ソース/シンクによる濃度変化を解析します。
Chemical Reactionパッケージ (RCT)
化学反応による濃度変化を解析します。
Transport Observationパッケージ (TOB)
調査点の濃度とソース/シンクの境界条件グループの質量流束を出力します。
Generalized Conjugate Gradient Solverパッケージ (GCG)
輸送方程式の分散、ソース/シンク、反応期間を解析します。

ここでは、前セクションで選択した3つのパッケージについて説明します。


Advectionパッケージ

移流による濃度変化を解析するための解析エンジン(Solution scheme)を選択できます。本チュートリアルでは、デフォルト設定のThird Order TVD scheme (ULTIMATE)を使用するため、操作を行う必要はありません。


Dispersionパッケージ

Dispersionパッケージは、分散による濃度変化を解析します。

  1. メニューの「MT3DMS>Dispersion Package...」を選択します。Dispersion Packageダイアログが開きます。
  2. 「Longitudinal Dispersivity...」ボタンをクリックします。Longitudinal Dispersivityダイアログが開きます。さらに「Longitudinal Dispersivity...」ボタンをクリックします。
  3. TRPT
    緯度方向の拡散度に対する水平方向の拡散度の比
    TRVT
    緯度方向の拡散度に対する鉛直方向の拡散度の比
    DMCOEF
    分子の有効拡散係数(effective molecular diffusion coeffisient)
  4. 「Longitudinal Dispersivity...」ボタンをクリックします。Longitudinal Dispersivityダイアログが開きます。
  5. 「Constant→Grid...」ボタンをクリックします。Grid Valueダイアログが開きます。
  6. Constant value for grid欄に「20.0」を入力します。OKをクリックします。すべてのセルに入力値(20.0)が設定されます。
  7. OKをクリックしてLongitudinal Dispersivityダイアログを閉じます。
  8. Dispersion Packageダイアログで、スプレッドシートのTRPT列に「0.2」を入力します。
  9. OKをクリックしてDispersion Packageダイアログを閉じます。

Source/Sink Mixingパッケージ

Source/Sink Mixingパッケージは、ソース/シンクによる濃度変化を解析します。この例題のソース/シンクは、北の注入井です。注入井のソースを設定するには、井戸を選択して濃度(concentration)を入力します。

  1. Select Cellsiconツールを使用して、注入井のあるセル(cell ID 304)を選択します。
  2. 選択したセルを右クリックし、メニューから「Sources/Sinks...」を選択します。Sources/Sinksダイアログが開きます。
  3. 左欄から「MT3DMS: Point SS」を選択します。
  4. 「Add BC」ボタンをクリックします。スプレッドシートに新しい行が追加されます。
  5. スプレッドシートのType (ITYPE)列のドロップダウンから「well (WEL)」を選択します。
  6. Speciesごとに値を設定します。ここでは、tracer欄に「57.87」を入力します。
  7. 以上で、「ID 304」セルにトレーサーの濃度が設定できました。設定が終了したら、OKをクリックしてダイアログを閉じます。

MT3DMSの実行

  • MT3DMSを実行しましょう。
  • MT3DMSを実行する前に、プロジェクトをSaveiconします。

  1. メニューの「MT3DMS>Run MT3DMS...」を選択します。もしくはRun MT3DMSiconボタンをクリックします。
  2. 3. 解析が実行されます。解析が終了したら、「Read solution on exit」オプションにチェックを入て、Closeをクリックします。グラフィックウィンドウは下記のようになります。

解析結果の閲覧

  • 解析結果の表示設定を変更して見やすくします。
  • 解析結果をアニメーションにすることができます。
  • 汚染量を計算できます。

The Source/Sink Mixingパッケージの閲覧

汚染物質の拡散を表示する場合は、塗りつぶし(color fill)オプションを有効にすると見やすくなります。

設定を変更するには、Contour Optionsiconをクリックして、ダイアログを開きます。Contour method欄でドロップダウンリストから「Color Fill」を選択します。OKをクリックします。


アニメーションの設定

シミュレーション結果の1年間に渡る変化を、アニメーションで示すことができます。

  1. メニューの「Display>Animate...」を選択します。Animation Wizardダイアログが開きます。
  2. Animation Wizard-Optionsダイアログでiconアイコンをクリックして、動画ファイルを保存するフォルダとファイル名を設定します。保存形式は「Animation (*.avi)」を選択します。
  3. Datasetオプションにチェックを入れてオンにします。設定が完了したら、次へをクリックします。
  4. Animation Wizard-Datasetsダイアログで下記を設定します。
  5. Use constant intervalを選択します。
  6. Time interval欄に「36.5」を入力します。この設定で、動画が11フレームになります。
  7. 設定が完了したら、完了をクリックします。手順2で選択したフォルダに、動画ファイル(.avi)が生成されます。
  8. 動画を再生するには、メニューの「Display>Play Animation...」からファイルを開きます。

汚染量の計算

様々なタイムステップにおける帯水層の汚染量を計算します。

  1. Select Cellsiconツールを使用して、下の井戸のセル(cell ID 752)を選択します。
  2. メニューの「MT3DMS>Calculate Mass...」を選択します。
  3. Calculate Massダイアログが開きます。このダイアログでは、モデル全体または選択したセルの汚染量を計算します。
  4. Concentration range欄の「Specify range in calculation」にチェックを入れます。
  5. Min欄に「0.0」、Max欄に「9.0」を入力します。
  6. Unit conversion factor欄のFactorに「0.0283」を入力します。
  7. 「Use only selected cells in calculation」オプションにチェックを入れます。
  8. 設定後、Calculateボタンをクリックします。右欄に計算結果が表示されます。計算結果は、選択して右クリックするとコピーができます。
  9. 「Use all cells in calculation」オプションにチェックを入れます。再度Caluculateボタンをクリックします。
  10. タイムステップごとに、帯水層の汚染の総量が表示されます。

より詳細なチュートリアルは、ライトストーンユーザ様限定のコンテンツとして公開中です。

page_top_icon