MODFLOW 概念モデルアプローチ1

このチュートリアルは、概念モデル(conceptual model)を構築してMODFLOWシミュレーションを行う手順について解説しています。

  • 本チュートリアルでは、まず概念モデルに境界のカバレッジを構築します。そして、source/sinkカバレッジに河川を作成し、境界の河川に水頭を割り当てます。カバレッジからポリゴンを構築します。帯水層カバレッジには、透水係数とレイヤの標高を設定します。
  • 概念モデルを構築したら、モデルを覆うグリッドフレームを作成し、グリッドフレームの中にグリッドを作成します。そして、MODFLOWを実行する範囲を定義します。そして、モデルをグリッドによって定義されるMODFLOW数値概念モデルに変換します。
  • グリッドに水頭を設定したら、MODFLOWシミュレーションを実行します。

例題について

  • アメリカ合衆国東テキサスの地形を例題にします。
  • 北の丘と2つの川に挟まれた渓谷があり、この範囲の堆積物中の地下水流をモデル化します。
  • 2つの河川は、南東の下流で合流しています。水頭は河川の平均水位とします。
  • 北の境界(石灰岩の露頭の丘)には水流がありません。
  • 流入は、降雨による涵養(recharge)が最大要因と仮定します。
  • クリークベッド(creek bed)は、干上がっていたり、地下水からの流入で水が流れていたりする場所です。ここは、drainとして表します。
  • 2つの工業用井戸(production well)があります。

※下2つの条件は、本チュートリアルでは使用しません。「概念モデル2」以降のチュートリアルで設定します。


チュートリアルで行う操作

本チュートリアルでは、サンプルデータを使って下記の操作を行います。

  • カバレッジ(coverage)を作成して値を設定する
  • カバレッジに3Dグリッドにマッピングする
  • シミュレーションをチェックし、MODFLOWを実行する

「概念モデル2」以降のチュートリアルでは、下記のようにより現実に近くなるようにモデルを複雑化してシミュレーションを実行します。

  • モデルに井戸とクリークベッドを追加する
  • シミュレーションのグリッドを2層にする
  • 井戸を2層の地層に貫通させる
  • 井戸にスクリーン(ストレーナー)を設定する
  • 埋立地を追加する

さらに、粒子追跡(MODPATH)と粒子輸送(MT3DMS)のチュートリアルでは、埋立地からの地下水汚染を評価します。


サンプルファイル

下記よりサンプルファイルをダウンロードします。

ダウンロード(4.5 MB)

start.gprファイルを開くと、背景画像がインポートされたデータが開きます。アメリカ地質調査所(USGS)の地図をスキャンしてインポートし、座標系の設定を行ったデータです。この背景画像を参考にモデルを構築していきます。

  • 操作を始める前に、データを別名で保存します。メニューバーから「File>Save as」を選択し、ファイル名を「easttex.gpr」に変更して保存します。
  • 作業中は、こまめにデータを保存iconすることをお勧めします。

境界の定義

  • モデルの外側との境界を定義するために、閉じたアークを作成します。
  • 概念モデルを作成し、その中に境界のカバレッジを作成します。カバレッジごとにオン/オフを切り替えられるので、カバレッジを分けてコポーネントを構築すると、モデルの修正や再計算が操作しやすくなります。
  • 境界は、iconMapモジュールの「Create Arcicon」ツールを使って手動で作成したり、インポートした河川などのデータから作成したりします。今回は、既に用意されているMapデータをインポートして使用します。

Mapデータのインポート

  1. 「Open」をクリックして「Boundary.map」をインポートします。概念モデルEast Texasと、カバレッジBoundaryに作成されたアークが表示されます。
  2. Boundaryには、南を東西に流れる川、東を南北に流れる川、北の石灰岩露頭帯のふもとに沿って閉じたアークが作成されていることを確認します。

カバレッジを複製して、河川のカバレッジを構築する

次に、概念モデルに河川のカバレッジを構築します。カバレッジの設定は、ソース/シンク(source/sink)とします。このカバレッジに、河川、井戸、ドレインを構築し、水頭を定義します。

  • Boundaryに河川の形状が入力されているので、複製して編集し、河川のカバレッジとします。
  • カバレッジに作成するオブジェクト(河川のアーク)のプロパティは、Coverage Setupダイアログで設定します。

操作方法

  1. プロジェクトエクスプローラーでiconBoundaryを右クリックし、メニューから「Duplicate」を選択します。iconCopy of Boundaryが作成されます。 ※iconBoundaryが表示されていない場合は、East Texasを展開します。
  2. iconCopy of Boundaryを右クリックし、メニューから「Rename」を選択します。カバレッジの名前を「Rivers」に変更します。
  3. iconRiversを右クリックしてメニューから「Coverage Setup」を選択し、Coverage Setupダイアログを開きます。
  4. 「Sources/Sinks/BCs」列で「General Head」にチェックを入れます。
  5. 「Use to define model boundary(active area)」にチェックを入れます。標高(Default elevation)は、iconBoundaryのデータを引き継いで、213 mに設定されています。
  6. 「OK」をクリックしてダイアログを閉じます。

河川のアークを作成する

iconRiversに複製されたアークは1本のアークなので、3分割して河川のアークを作成します。

  1. プロジェクトエクスプローラでiconRiversを選択します。
  2. iconSelect Vertices ツールを使用して、キーボードのShiftキーを押しながら、下図の2つの頂点(矢印部分)を選択します。(下図はiconGIS Layersのチェックを外し、背景を非表示にしています。)
  3. 頂点を選択した状態で右クリックし、メニューから「Vertex→Node」を選択します。頂点がノードに変換され、アークが3本に分割されます。

    それぞれのアークは、東の河川と南の河川、水流のない北の石灰岩の露頭を表しています。

河川の水頭を入力する

河川のアークの形式を「general head」に設定し、水頭の値を入力します。

  1. Select Arcsiconを使用して、南と東の河川のアークを選択します(Shiftキーでアークの複数選択が可能です)。
  2. 2本のアークを選択した状態で右クリックし、メニューから「Attribute Table」を選択します。Attribute Tableダイアログが開きます。
  3. All行で「Type」列のドロップダウンリストから「gen. head」を選択します。すべての列に「gen. head」と入力されます。
  4. All行で「Cond(m^2/d)/(m)」列に「1.0」を入力します。すべての列に「1.0」が入力されます。
  5. 「OK」をクリックしてAttribute Tableダイアログを閉じます。
  6. モデルのアーク以外の部分をクリックして選択を解除すると、アークの色がGeneral headを表す色に変わります。色の設定はDisplay Optioniconで変更できます。
     
    次に、アークの両端の点に水頭を定義します。2点間の水頭は、河川に沿って線形関係で変化すると仮定します。
  7. Select Points/Nodeiconを使用して、南の河川の西の端点をダブルクリックします。Attribute Tableダイアログが開きます。
  8. 「Type」が「gen.head」になっている行の「Head-Stage(m)」列に、「212.0」を入力します。
  9. 「OK」をクリックしてダイアログを閉じます。
  10. 同様の手順で、南の河川の東の端点に「208.0」、東の河川の北端に「214.0」を入力します。

ポリゴンを構築する

  • ソース/シンク形式のカバレッジは、モデル化する領域全体が重なりのないポリゴンで覆われている必要があります。このポリゴンが、グリッドの有効な領域を定義します。
  • 通常は、全てのポリゴンをvariable headポリゴンとします(デフォルト設定です)。ポリゴンの種類を変えることもできます。例えば、湖をモデル化する場合はgeneral headポリゴンを構築します。
  • ポリゴンを構築するには、カバレッジにすべてのアークを作成した後、Build Polygonsiconを実行します。Build Polygonsiconコマンドは、アークが閉じた輪になっている部分を検索し、ポリゴンを構築します。
  • このポリゴンは形式が「None」となります(デフォルト設定です)。形式を変更することもできます。

操作方法

  1. Build Polygonsiconをクリックします。アークからvariable headポリゴンが構築されます。
  2. 必要に応じて、Display Optioniconでポリゴンの表示設定を変更します。

帯水層の設定

  • 新規カバレッジを作成して、帯水層の透水係数とレイヤーの標高を設定します。

帯水層のカバレッジを作成する

  1. iconBoundaryを複製します。これを帯水層のカバレッジとします。
  2. 複製したカバレッジを右クリックしてメニューから「Coverage Setup」を選択して、Coverage Setupダイアログを開きます。下記の設定を行います。
    • Coverage nameを「Aquifer Layer 1」に変更します。
    • Areal Properties列で「Horizontal K」「Top elev.」「Bottom elev.」にチェックを入れます。
  3. 「OK」をクリックしてダイアログを閉じます。

透水係数の設定

帯水層の透水係数(hydraulic conductivity)を入力します。本チュートリアルでは、例題を簡素化するためにグリッド全体に定数を設定します。
一般的には、異なる複数の透水係数を定義し、複数のポリゴンを構築します。

下記の操作で帯水層のレイヤーに透水係数(K)を設定します。

  1. プロジェクトエクスプローラで iconAquifer Layer 1を選択します。
  2. Build Polygonsiconをクリックして、カバレッジにポリゴンを作成します。
  3. Select PolygonsiconツールでポリゴンをダブルクリックしAttribute Tableダイアログを開きます。
  4. 「Horizonal K(m/d)」列に「5.5」を入力します。

レイヤーの標高の設定

モデルのレイヤーの標高を定義します。このチュートリアルでは、一番上のグリッドと下のグリッドに定数を設定します。
より現実に近い標高を入力するために、点から標高を補間する方法もあります。

  1. Attribute Tableダイアログの「Grid Top elev.」に「240.0」を入力します。
  2. 「Grid Bot elev.」に「175.0」を入力します。
  3. 「OK」をクリックしてダイアログを閉じます。

グリッドの作成

  • カバレッジが完成したので、グリッドを作成します。
  • まず、グリッドフレームを使ってグリッドの位置と方向を設定します。そして、グリッドフレームの中にグリッドを作成します。
  • グリッドフレームを設定しない場合は、モデルより約5%大きい範囲を覆うようにグリッドが初期設定されます。

  1. プロジェクトエクスプローラで何もない部分を右クリックし、メニューから「New>Grid Frame」を選択します。グラフィックウィンドウにグリッドフレームが表示さ、プロジェクトエクスプローラーに「Grid Frame」が作成されます。
  2. Select Grid iconを使用してグリッドフレームを選択します。右クリックメニューから「Fit to Active Coverage」を選択します。アクティブなカバレッジ(プロジェクトエクスプローラーでカラー表示になっているカバレッジ)に合うように、グリッドフレームの大きさが調整されます。
  3. プロジェクトエクスプローラで iconRiversを選択して、アクティブにします。
  4. メニューバーから「Feature Object>Map→3D Grid」を選択します。Create Finite Difference Gridダイアログが開きます。
  5. X-Dimension欄でCell sizeを選択し「20.0」と入力します。Y-Dimension欄も同様に操作します。
  6. 「OK」をクリックしてダイアログを閉じます。グリッドフレームに3Dグリッドが作成されます。

MODFLOWモデルの設定

  • MODFLOWを設定します。
  • MODFLOWで解析できるように、概念モデルを数値モデルに変換します。
  • Model Chekerを実行して、モデルに不備ないかチェックします。

MODFLOWデータを新規作成する

概念モデルをグリッドベースの数値モデルに変換する前に、MODFLOWデータを初期化します。

  1. プロジェクトエクスプローラで icongridを右クリックし、メニューから「New MODFLOW」を選択します。MODFLOW Global/Basic Packageダイアログが開きます。
  2. 「Starting heads equal grid top elevation」にチェックが入っていることを確認します。デフォルト設定のまま「OK」をクリックしてダイアログを閉じます。

アクティブ/非アクティブの範囲を定義する

モデルのアクティブと非アクティブの区域を定義します。カバレッジの情報を使って、アクティブにする範囲を自動選択できます。

  1. プロジェクトエクスプローラでSource/Sinkを設定したiconRiversを選択します。
  2. メニューバーから「Feature Object>Activate Cells in Coverage(s)」を選択します。

iconRiversのポリゴンの中にあるセルがアクティブになり、ポリゴンの外にあるセルはすべて非アクティブになります。水流のない境界(北の丘)のセルは、外側のセルのエッジに一致するようにアクティブになります。水頭を設定した境界(南の河川、東の河川)は、周囲のセルの中心に一致させるように選択されます。


概念モデルを数値モデルに変換する

フィーチャオブジェクトで定義された概念モデルを、グリッドによって定義されるMODFLOW数値概念モデルに変換します。

  1. プロジェクトエクスプローラでiconEast Texasを右クリックし、メニューから「Map to>MODFLOW/MODPATH」を選択します。Map→Modelダイアログが開きます。
  2. 「All applicable coverages」を選択して「OK」をクリックします。

水頭を設定した境界のセルが識別され、ソース/シンクとして割り当てられます。各セルの水頭と標高は、水頭を設定したアークに沿って、線形補間されます。透水係数の値もセルに割り当てられます。


初期水頭を設定する

MODFLOWを実行する前に、グリッドに初期水頭を設定します。
本チュートリアルでは、MODFLOWデータを作成する際に「Starting heads equal grid top elevation」オプションを有効にしました。これにより、標高(230 m)が初期水頭の値として既に設定されています。


シミュレーションをチェックする

以上で、シミュレーションを実行する準備が完了しました。シミュレーションを実行する前に、Model Checkerを実行し、不適切な設定がされていないかどうかをチェックします。

  1. メニューバーから「MODFLOW>Check Simulation」を選択します。Model Checkerダイアログが開きます。
  2. 「Run Check」をクリックして実行します。
  3. エラーがないことを確認したら、「Done」をクリックしてダイアログを閉じます。

MODFLOWの実行

  • MODFLOWを実行する前には、必ずSaveiconをクリックしてプロジェクト全体を保存します。
  1. メニューバーから「MODFLOW>Run MODFLOW」を選択してMODFLOWダイアログを開きます。モデルが構築されます。
  2. MODFLOWの解析が終了したら、「Read solution on exit」と「Turn on contours(if not on already)」にチェックを入れます。「Close」をクリックしてダイアログを閉じます。

シミュレーション結果がコンター図として表示されます。水頭の推定値を示しています。

ワンポイントアドバイス

グリッドを非表示にするには、Display Optioniconを開きます。左から3D Grid Dataを選択し、Cell edgesのチェックを外して「OK」をクリックします。

「概念モデルアプローチ2」以降のチュートリアルは、ライトストーンユーザ様限定のコンテンツとして公開中です。

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