第11回学生論文コンテスト「光石賞」にご応募・ご提出いただきました皆様に、改めて御礼申し上げます。
厳正なる審査の結果、第11回「光石賞」学生論文コンテストの入賞者は次のように決まりましたのでご報告いたします。
この度は、光石賞という輝かしい賞を頂戴し、大変光栄に思います。1本の学術論文を1人で仕上げるという経験が初めてで、問題意識の設定値やデータの統計処理、分析結果の解釈といった各プロセスにおいて何度も壁にぶつかりましたが、周りの多くの方々からの貴重な意見や叱咤激励を得たことで、紆余曲折を経ながらも本論文を完成させることができました。特に、分析に用いた個票データを提供してくださった慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センター様、執筆時にお互いに激励や切磋琢磨しあった研究会の同期・後輩たち、そして熱心にご指導ご鞭撻頂いた指導教授の山本勲先生には、この場を借りて心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
この度は、審査員特別賞をいただくこととなり、大変ありがたく思います。
これまで、日本の地方行政における大きな出来事である、市町村合併が経済活動に与えた影響について、世間では周辺地域が衰退するなどの指摘がなされているにもかかわらず、適当なデータがないとされていたためか、それを定量的に評価した論文が国内外でほとんど存在しませんでした。本研究では、そのことに問題意識を持ち、政府が公開する統計データを最大限組み合わせることで、定量的な評価を行いました。
本論文の作成に際しては、大学院における、財政の実証分析に関する演習における、文献購読が大きく役に立ちました。特に、他学部卒で知識に偏りがあった私にとり、そこで得られた知識は計り知れません。指導いただいた、林先生、別所先生、またコメント等いただいた先輩方には心から感謝いたします。
また、今回の受賞を励みに、今後とも経済の研究に精進していきたいと考えております。
東京大学大学院
新領域創成科学研究科
藤本 丈史 様
このたび審査員特別賞に選んでいただきありがとうございました。お時間を使って論文を読んでいただいた審査員の方々に感謝します。また指導教官の鈴木綾先生をはじめ、快く相談にのっていただいた先生やタンザニアの方々に感謝します。
本論文のテーマは途上国農家のTechnology adoptionに関わるため、Tobit/Probit model をCorrelated Random Effectというパネルデータ手法と組み合わせて分析しました(Fixed Effectだと推定の一致性に問題が生じます)。この分析手法は、ネット上にアップされていたWooldridgeの(授業用?)スライドや論文中の (Wooldridge 2010) を参考にしました。またテーマが農家の農業生産性と密接に関わるため、本論文はStochastic Frontierという手法を用いて、生産の効率性や各投入財がもたらす産出量の増分も推定しました。この手法は (Belotti et al. 2013) や (Kumbhakar et al. 2014) を参考にしました。これらの手法を用いたデータを論文誌上で公開している先行研究もあります。どちらも有用な分析手法だったので、計量手法で悩んでいる方の参考になれば幸いです。
専修大学商学部 大林 守 教授
光石賞は学び直しを研究した「学び直しへの参加・継続とその効果に関する実証分析」となった。
学び直しの重要性は高い。なぜならば、未曾有の少子高齢化に直面している日本社会では、長寿化による人生100年という人生設計問題を解く必要があり、そのためには人生の多毛作化、ICT等の技術革新やグローバル化による産業構造変化、そして人的資本の陳腐化速度の上昇といった現象に対して通常の学校教育やOJTでは追いつかず、「学び直し」が必要となるからである。
学び直しへの参加・継続の決定要因とその賃金への効果について、利用可能なデータおよび複数の手法を駆使した分析は、いささか強引な箇所も見受けられるが、プラクティカルな経済分析として好感がもてる。一方で、学び直しへの参加・継続が賃金上昇に関係するという仮説は妥当として、この論文では問うていない新たな雇用機会という側面は、データの制約で分析が困難なことは予想できるが重要性は高い。
準光石賞は該当なしとし、下記の2論文に審査員特別賞を与える。
これら2論文に対する複数の匿名審査員の集計得点は、ほぼ同一であった。しかし、論文の個別評価には差が出た。タンザニア論文は、公開されているデータを利用し、先行研究の上に知見を付け加えようとする論文である。分析は正統的であるが、得られた新しい知見としては弱いという意見が出た。
市町村合併論文は、公開されているデータから大字ベースのデータを作成して、新しい視点から分析を行っている。作成したデータベースを適正に活用した分析かという点からいくつかの疑問が提示されている。と同時に重要な課題へのチャレンジ精神と実行力に対して高い評価を得ている。