第9回学生論文コンテスト「光石賞」 -ソフトウェアによる実証研究-

 

第9回学生論文コンテスト「光石賞」 審査結果

Contest 2017

第9回学生論文コンテスト「光石賞」にご応募・ご提出いただきました皆様に、改めて御礼申し上げます。
厳正なる審査の結果、第9回「光石賞」学生論文コンテストの入賞者は次のように決まりましたのでご報告いたします。

受賞論文 ※各論文のタイトルをクリックすると読むことができます。

光石賞

「Sources of Inflation Dynamics in Japan: AS-AD and Monetary Policy Effectiveness」(PDF, 963KB)

第9回光石賞_光石賞受賞 小嶺様University of Wisconsin Madison
Department of Economics
小嶺 成司 様

 

受賞の感想

第9回光石賞を頂戴し、光栄に存じます。本論文の作成にあたっては、ライトストーン社様より提供されているEviews10に新たに実装された分析機能を活用させて頂き、その統計分析ツールとしての強力さを実感致しました。 また、同ソフトウェアのユーザーマニュアル等の資料は、コンパクトながらも、ソフトの操作方法にとどまらず、分析手法の理論にも言及されており、技術的なリファレンスとして大いに助けとなりました。 研究過程では、ウィスコンシン大学マディソン校のBruce Hansen教授に有益なご助言を頂きましたこと、感謝を込めて申し添えます。ありがとうございました。


準光石賞

「The Effect of Social Influence on Farmers’ Intention to Buy Flood Insurance: The Evidence from Randomized Controlled Trial in Hue, Vietnam」(PDF, 97KB)

東京大学
経済学部
澤田ゼミの皆様

岩野 恵  様
王 凱易  様
加藤 聖樹 様
高 可欣  様
内藤 大貴 様
林 亮太  様
梁 雅浩  様
上村 諒  様
太田 充  様
金 賢振  様
古座 匠  様
丹羽 慶太 様
福永 晋朔 様
山本 新  様

第9回光石賞_準光石賞受賞 澤田ゼミの皆様
左より、金賢振 様、山本新 様、岩野恵 様、澤田康幸 教授、
福永晋朔 様、丹羽慶太 様

受賞の感想

この度は準光石賞という栄えある賞をいただき、誠に嬉しく思っております。 一人で実証研究を進めるだけでも大変であるにも関わらず、ゼミの数名で共同研究を行う過程では、より多くの苦労を伴いました。 しかしながら、複数人で作業を分担したり議論を戦わせたりしたからこそ、共に切磋琢磨ができた上に、一人でできないような研究ができたと考えています。この経験と受賞の喜びを心に刻み、今後も実践的な開発経済の勉強と研究が続けられるよう、皆で精進してまいります。 最後に、ご教授くださった澤田先生、共に研究に励んでくれたゼミ生の皆、フィールドワークにご協力くださったフエ農林大学の方々に、心から感謝いたします。

澤田ゼミ代表 福永晋朔 様


講評

専修大学商学部 大林 守 教授

光石賞は、僅差で時系列マクロ計量モデルによる日本経済の分析となった。ADASモデルをベースに、実質GDP、コアCPI、実質金利、実質貨幣ストック名目GDP比率の4変数(四半期差分:1974−2017)に関して、標準的ステップを遵守して、構造VARモデルを構築した上で、標準的な政策効果分析を行うという模範的な論文である。主たる結論は、デフレは供給要因であり、量的緩和の効果は失われているが金利を通じた調整の余地があるというものである。  評者の中には、変数選択(実質長期金利)の妥当性、政策評価手法の適切性、サンプル期間における政策転換・構造変化の可能性に対する配慮を問う声もあったが、明解な論理展開とタイムリーな課題である日本の金融政策を分析しようとする姿勢を評価した。

準光石賞は、ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial )によるベトナムの私的自然災害損害保険の分析である。筆者が“follow効果”と呼ぶ「隣人が加入していると本人の購入が促される効果」を、RCTを利用し、標準的なステップで実証した優れた論文である。  惜しむらくは、読者に対する情報提供をもっと考えて欲しかった。ベトナムにおける農業の重要性から自然災害に対する保険の必要性は理解できるが、ベトナムにおける自然災害損害保険市場の実態を知る読者は少ない。実際のアンケート質問票の情報も過小である。ベトナムの公的農作物保険は維持不能で制度が廃止されたと聞くが、私的保険制度導入はどのような現実性を持って可能なのであろうか。そして、アンケートにおいて、自然災害の確率、保険適用条件、保険加入費用、個別水害被害金額の想定、被害補償金額の想定、さらには無保険下の政府による補償可能性等がきちんと反映された質問がなされていたのであろうか。  また、follow効果自体が古典的なデューゼンベリーのデモンストレーション効果と何が違うのかという疑問もある。もし「隣が保険に加入したから自分も加入すれば将来的に保険金が安くなるだろうから加入する」という期待効果であれば、より新規性があったであろう。

 

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