構造方程式モデリング(SEM, Structural Equation Modeling)とは、仮説に基づいて変数間の関係をモデル化し、 そのモデルをデータに当てはめて検証する分析手法です。共分散構造分析とも呼ばれます。 心理学や計量経済学などの分野で利用され、アンケート結果のデータなどから、定量的に計測できない変数間の関係性をモデル化することができます。
構造方程式モデリングでは、観測可能な変数(観測変数)と観測されない潜在的な変数(潜在変数)の因果関係を仮説に基づいてモデル化します。 潜在変数間の関係を表現することができ、仮説の妥当性を検証する際に有用な分析手法です。
以下では、構造方程式モデリングの概要についてご紹介します。
さまざまな種類の統計モデルを表現するための非常に柔軟な手法です。
SEMを使用することで、観測データや潜在変数間の複雑な関係をモデル化し、因果関係や相関を解析することができます。
以下は、SEMを用いて表現できる代表的な統計モデルの一例です。
変数間の関係を表すには、パス図を用います。 観測変数、潜在変数、誤差変数を四角形、楕円、円などの図形で表現し、各変数間(図形)を矢印でつなぐことで因果関係や相関関係を表現します。
構造方程式モデリングが実装された統計解析ソフトウェアでは、パス図を描くことでモデルを表現できるものが多く、 変数間の複雑な関係を簡潔に表現できます。
右図は、統計解析ソフトウェアStataで記述した構造方程式モデリングの一例です。
多重指標モデルは、複数の観測変数(指標)を使用して、複数の潜在変数(因子)を測定するモデルです。 測定モデルと構造モデルの2つの主要な部分から構成されます。
構造方程式モデリングにおける多重指標モデルは、複数の観測変数を使って潜在変数を測定し、これらの潜在変数間の関係を分析する方法です。 これにより、観測できない心理的な要因を考慮に入れつつ、因果関係をモデル化できるため、複雑なデータの解析に非常に強力なツールとなります。
構造方程式モデリングの分析手順は次のとおりです。
モデルの適合度を評価するために、CFI(比較適合指数)、TLI(トール・ルイス指数)、RMSEA(平均二乗誤差)などの適合度指標を確認します。
初期のモデルが適合しない場合にモデルを修正することがありますが、理論的根拠を伴った変更を行うべきです。
構造方程式モデリング(SEM)は、観測されたデータと潜在変数(直接観測できない概念)間の複雑な関係を明示化するための強力な分析手法です。
SEMでは、測定モデルと構造モデルを組み合わせることで、潜在変数間の因果関係を推定し、データの背後にある構造を解明できます。
これにより、心理学、社会学、マーケティングなどの分野で、消費者の態度や行動、企業の戦略的意思決定、健康状態の評価などを定量的に分析できます。
また、複数の指標を使用して、データ間の複雑な相互作用や因果関係を明示的に示すことができる点が大きな利点です。