概要

解析に必要な情報は、粉末回折のピークデータ、格子定数、組成の3つだけ

Endeavourは、X線回折(XRD)などの粉末回折データから構造解析を行うソフトウェアです。 リートベルト法により結晶構造の精密化計算を行うためには、かなり実際の構造に近い構造モデルがなければ解析を行うことができません。Endeavourは、その初期結晶構造モデルを求めるためのソフトウェアです。

指数づけを行ってからリートベルト解析を行うまでの間を埋める、強力な解析ソフトウェアです。小~中サイズの結晶構造を解析でき、有機/無機物質の両方に対応し ます。

Endeavourで解析を行うために必要な情報は、以下の3つだけです。

  1. 測定で求めた粉末回折のピークデータ(2θ vs 強度 または d値 vs 強度、放射線の波長)
  2. 結晶の格子定数(単位格子の結晶軸3辺の長さa,b,c、軸間角度α,β,γ)
  3. 単位格子中に含まれる原子や分子の種類とそれぞれの数(組成)

これらの情報を画面上に表示されるガイドに従って入力していくだけで、結晶構造データベースに粉末回折パターンが収録されていない結晶質の化合物の構造モデルでも計算で求めることができます。

空間群が分かっていれば、空間群の情報を加味して計算を行い、解析時間を短縮することができます。未知の場合は空間群P1とみなして解析を行い、解析後にSymmetry Finderという機能を使って、空間群を求めることもできます。

→結晶の構造モデルを表示しながらEndeavourでの解析は進みます。
可視化ソフトにデータを流し込まなくても、その場ですぐに構造を直感的に把握できます。

解析中に構造モデルを3D表示

解析の操作が簡単なこともEndeavourの特徴

どのような解析でも、ほとんど決まった操作を行うだけで構造解析ができます。ユーザーインターフェイスはかなり作り込まれていて、ウィザードの質問に答えていくだけで、Endeavourで行えるほとんどの解析が実行できます。使いやすさは、専門的なソフトウェアとしては画期的といえるかもしれません。

Endeavourでの構造解析は、実空間法を改良した手法を用いています。具体的には、実験で得られた回折パターンと計算で求められたものの相違と、結晶の系のポテンシャルエネルギーについて、大域的最適化(global optimization)を行います。

解析に必要な情報は、格子定数、結晶に含まれる原子や分子の組成、そして粉末回折データ(ブラッグ角2θでの積分強度)、または、Pawley法やLe Bail法、単結晶回折データから求めた結晶構造因子|F(hkl)| だけです。

このような構造解析を行った経験がほとんどないユーザーでも、ウィンドウに表示されるガイドにしたがって数ステップほどデータなどを入力していくだけで、構造解析を実行できます。

回折データから構造モデルを決定するまでの困難を軽減することに、Endeavourは役立ちます。Endeavourにより解析する過程では、結晶構造が完全にランダムな原子配置から最終的なモデルになるまでの様子を 立体図として画面に表示します。計算結果がその場ですぐに可視化されるので、構造が直感的にわかります。

解析終了後だけでなく、解析中でさえ、視点や表示モデル、色などの変更をDiamondと同じような操作で行えます。解析結果を検討するために、ほかの可視化/視覚化ソフトに結果データを受け渡すという手間はまったくありません!

結晶構造の解析結果を直感的に把握可能

Endeavourの科学的背景

Endeavourは、一連の結晶構造解析のプロセスの中で何を解析でき、どのような手法を用いていて計算を行っているのかという、 このソフトウェアの科学的背景をこちらのページでご紹介しています。

また、Endeavourについての詳細は、以下の学術雑誌で発表されています。

Journal of Applied Crystallography: H. Putz, J.C. Schoen, M. Jansen, Combined Method for "Ab Initio" Structure Solution from Powder Diffraction Data, J. Appl. Cryst. (1999), 32, 864-870.

Endeavourの利用実績

下記のリストは、粉末回折からの結晶構造解析にEndeavourが利用された事例の一例です。

  • E. Napolitano, F. Dolci, R. Campesi, C. Pistidda, M. Hoelzel, P. Moretto, S. Enzo, Crystal structure solution of KMg(ND)(ND2): An ordered mixed amide/imide compound, Int. J. Hydrogen Energy 39, 868-876 (2014).
  • Mario A. Gomez, G. Ventruti, M. Celikin, H. Assaaoudi, H. Putz, L. Becze, K. E. Leea, G. P. Demopoulos, The nature of synthetic basic ferric arsenate sulfate (Fe(AsO4)12x(SO4)x(OH)x) and basic ferric sulfate (FeOHSO4): their crystallographic, molecular and electronic structure with applications in the environment and energy, RSC Advances 3, 16840-16849 (2013).
  • E. Napolitano, Magnesium Imide: Synthesis and Structure Determination of an Unconventional Alkaline Earth Imide from Decomposition of Magnesium Amide, Inorg. Chem. 50, 1116-1122 (2011).
  • J. Beck, S. Benz, The Crystal Structure of Thallium(I) Trithiocarbonate, Tl2CS3, Z. Anorg. Allg. Chem. 635, (2009).
  • R.E. Dinnebier, B. Hinrichsen, A. Lennie, M. Jansen, High-pressure crystal structure of the non-linear optical compound BiB3O6 from two-dimensional powder diffraction data, Acta Cryst. B65, 1-10 (2009).
  • J.B. Christian, M.S. Whittingham, Structural study of ammonium metatungstate, J. Solid State Chem. 181, 1782-1791 (2008).
  • M. Beckman, J.A. Kaduk, Q. Huang, W. Wong-Ng, Z. Yang, D. Wang, G.S. Nolas, Synthesis and crystal structure of Na1-xGe3+z: A novel zeolite-like framework phase in the Na-Ge system, Chem. Commun., 837-839 (2007).
  • D. Santamaría-Pérez, J. Haines, U. Amador, E. Morán, A. Vegas, Structural characterization of a new high-pressure phase of GaAsO4, Acta Cryst. B62, 1019-1024 (2006).
  • H. Salim de Amorim, M. Rothier do Amaral Jr., P. Pattison, I. Pereira Ludka, J.C. Mendes, Ammonium Azide: A Commented Example of an Ab Initio Structure (Re-)Determination From X-Ray Powder Diffraction, Revista de la Sociedad Química de México 46, 313-319 (2002).
  • M. Pompetzki, M. Jansen, Sodium Monothiophosphate(V): Crystal Structure and Sodium Ionic Conductivity, Z. Anorg. Allg. Chem. 628, 641-646 (2002).
  • W.A. Crichton, G.B.M. Vaughan, M. Mezouar, In situ structure solution of helical sulphur at 3 GPa and 400°C, Z. Kristallogr. 216, 417-419 (2001).
  • M. Schreyer, M. Jansen, Synthesis, structure and properties of Ag2PdO2, Sol. State Sci. 3(1-2), 25-30 (2001).
  • M. Becker, M. Jansen, Synthesis of potassium cyanamide, and crystal structure determination by pareto optimisation of the cost functions `lattice energy' and `powder intensities', Sol. State Sci. 2(7), 711-715 (2000).

Endeavour 体験版(試用版)の制限事項について

  • 解析機能についてはインストール後60日間は制限がありません。
  • データをEndeavourの形式で保存できません。
  • 「Save as .. 」コマンドでほかのファイル形式にエクスポートすることはできます。
  • 構造図をプリントアウトと画像ファイルとして保存するときに、体験版であるという注意書きが書き込まれます。

Endeavourの体験版(試用版)はこちらからお申し込みください。

Endeavourクイックスタートガイドと日本語マニュアル

Endeavourの体験版を試用するときに便利なクイックスタートガイドを作成いたしました。 操作画面つきでわかりやすく手順を紹介していますので、このガイドをご覧いただくだけでも、Endeavourの使い方の流れが把握できます。Endeavourはどのように使うソフトなのかを知りたい方もぜひご覧ください。

以下のリンクからEndeavourの日本語マニュアルをダウンロードできます。ZIP形式の圧縮ファイルです。解凍するとPDFファイルになります。

 

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