EViews ユーザ事例 第5回
EViewsを使って誰でも「エコノミスト」になれる時代!?(3)

日本経済研究センター 飯塚 信夫氏/明治大学 加藤 久和先生

学生の間にもEViewsが浸透!?

【加藤先生】
実証をやっている経済学者というのは、他の研究者と共通のソフトを使わないとコミュニケーションが取りにくいというところもあるようです。EViewsが主流派になると、なかなか他のソフトが使いづらくなってしまうんですね。TSPを使っていた研究者がEViewsを使い始めてしまうと、TSPに戻れないどころか、EViews以外はなかなか使えないという状況になってしまいます。

マクロ計量モデルに関しては、最近はモデルも終わったなどと言われることがよくあるのですが、まだまだ実務として必要とされていて、マクロ計量モデルに対する需要は多い。そうなると、モデルを作りやすいソフトは何かというとEViewsだ、ということになります。方程式を1本ずつ推定するのではなく、モデル・オブジェクトを使用すれば効率的に推定が可能です。

こうしたことを考えるとEViewsでモデルを作成したほうがいいのではないか、ということになります。現在関わっているプロジェクトでもマクロ計量モデルを作っていますが、共同研究者ともやはりEViewsに統一しています。また、学生などからも「(EViewsで)何かいい本ないですか?」って聞かれたりすることも多くあります。私に聞くよりも、この本みてください(笑)。そんなこともよくあります(笑)。

そういう意味では、先生たちが使うので、EViewsが学生の間にも徐々に浸透してきていますね。「一生懸命アルバイトして買うぞ」ということになると、申し訳ないかなとも思います(笑)。しかし、修士課程の学生が実証分析をやるなら、EViewsはなくてはならない存在でしょう。


―― 学生さんには、EViewsの学生版(*2018年8月現在、学生版の販売は終了しています)が役に立つかもしれません。EViewsの学生版が最近発売になって、2年間だけしか使えないという制限はありますが、機能としては最新のEViews6と同じことがほとんど全部できます。EViewsの学生版はこれまでもあったのですが、1つ古いバージョンで、しかもかなり機能制限がありました。今度の学生版はご満足いただけるのではないでしょうか。

IT化で誰でも「エコノミスト」になれる時代に

【飯塚氏】
私もいくつかの大学で講義を受け持っております。授業でよく言うのですが、20年ぐらい前は、経済指標(例えば、鉱工業生産指数)のグラフがかけると立派なエコノミストといわれていたそうです。データの入手、入力など手間隙がかかりましたし、今のように高性能のパソコンに自由に触れられる環境ではなかったためです。

いまは、インターネットでデータをダウンロードし、Excelを使えば簡単にグラフが描けます。実際、私の授業では、学生たちにそうした作業を経験させています。いわばIT化のおかげで、誰でも「エコノミスト」になれる時代になったともいえます。EViewsのような使いやすい計量分析ソフトの登場もその一助になっていますが、それが学生限定でも手軽に入手できればありがたいですね。

経済分析や予測のツールがどんどん使いやすくなり、当たり前に利用できるようになると、アイデア、経済に対する見方とかシナリオ設定の勝負になってきます。経済分析や予測でご飯を食べている私たちも、うかうかしていられません。手を抜いたらすぐ失職の危機です。

しかし、多くの人が経済予測や分析に触れ、シナリオを考え、政策を語るようになれば、日本の政治や経済のあり方も変わっていくのではないか、とも思います。どんどん広まってくれればうれしいなあと思いますね。

普通の人が普通にEViewsを使えるように

【加藤先生】
一度でもパソコンで実証分析を行って、その有用性を知ってしまえば、EViewsを使う。使い方がわからないなら講習を受けようという人も増えてくると思いますが、しかしどこから実証分析の世界に入ってくるかが難しいところだと思います。

経済予測を業務とする人は、予測を実際にやらざるを得ないので、EViewsの世界に入ってくることもあり得ますが、現状では実証分析に関連する具体的な仕事がない人にとっては、まずこういったものに手を出すことはないでしょう。それは、もちろん必要がないからですが、しかし周囲を見渡すと、営業などで活躍している人もマーケティングを行う際に、地域ごとの需要などを統計的に推計をするという仕事もあるわけで、そういう人をいかにしてユーザとして大事にしていくかも考えていく必要があるのではないでしょうか。

EViewsを手にとってもらうためのインセンティブ付け -このソフトの特徴を具体的に知らせていくということを続ければEViewsももっと普及するのではないかと思います。マーケティングでも、需要予測でも役に立つということになれば、実証分析を行う経済学者という狭い世界を超えて普及していくのではないかと思います。


―― 今日は貴重な話をたくさん伺うことができました。お忙しいところをありがとうございました。

EViewsを通して経済予測を学ぶ!

「とにかくパソコンを使って推計を行うことが経済予測を学ぶ早道」という著者お二人の考えに沿って作られた、経済予測とシミュレーションの入門書。単にEViewsの使い方を学ぶためのマニュアルではなく、経済予測やシミュレーションの実例を体験して、経済予測のカンを養うことも目指した実践的な入門書です。

『EViewsによる経済予測とシミュレーション入門』(日本評論社)飯塚信夫・加藤久和著

page_top_icon